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「VeryGoods」(展示会)/日本プラスチック日用品工業組合
総 説
Report_Case02

「VeryGoods」(展示会)/日本プラスチック日用品工業組合

BtoC業界展示会による新しい商品マーケティング
〜消費者の声を直接聞く場の創出と、その効果〜

2016.04.21facebook

 戦後の高度経済成長とともに、私たちの暮らしに浸透していったプラスチック製品。かつては百貨店に並ぶほどの高級品であり、売場面積も広かった。
 全国のプラスチック製品のメーカーで構成する日本プラスチック日用品工業組合では昭和51(1976)年から組合員が製品を紹介する展示会「全日本プラスチック日用品フェア(JPF)」の開催をスタートした。デパートやスーパーのバイヤーや問屋を対象としたB to Bの展示会である。
 JPFは、昭和55(1980)年からは東京と大阪で交互に開かれ、会場は東京が晴海国際見本市会場、大阪はインテックス大阪に定着。平成9(1996)年からは東京のみでの開催となり、会場は東京ビッグサイトの東展示館2ホール分の規模にまで成長した。
 JPFは30回、タイトルをリニューアルした「ジャパン・ハウスウェア・トレードショー(JHT)」は3回開催されたが、平成20(2008)年の展示会を最後に、ついに休止を余儀なくされた。その原因は、平成5(1993)年、出展122社、入場者数15,000人のピークを境に来場者数が減少し始めたことにある。バブル経済の崩壊後、プラスチック製品を扱う問屋が倒産し、国内の市場規模は縮小。追い打ちをかけたのは100円ショップの登場だった。
 だが、組合の存在意義は展示会の開催にあるとの想いから、組合の事務局では平成24(2012)年に、厚生労働省の補助金を得て、展示会を再開。特筆すべきは大胆なリニューアルが行われたことだ。バイヤー向けのB to B展示会を、主婦、OL、学生といった一般消費者向けのB to C展示会に方向転換したのである。タイトルも、素敵な逸品を意味する「VeryGoods」に一新された。私は企画・制作プロデューサーとして、VeryGoodsに参加させて頂いた。
 最大のメリットは消費者の声を直接聞けることだ。プラスチック日用品のメーカーは中小企業が多く、自社でマーケティング調査を行えるほどの余力はない。商品開発の方向性は実際に商品を納めるバイヤーから得るしかない実情があった。しかし、VeryGoodsの誕生によって、参加企業は普段接することのないエンドユーザーから直接意見を聞くことができるようになったのだ。
 参加する約35社は社内の商品開発担当者に接客をさせながら、来場者とのコミュニケーションを行う。その会話から、商品の価格や機能に関する評価、そして実際のニーズについて聞くことで、新商品開発のヒントを得ているのだ。
 より多くの声を得るために、会場は利便性の高い東京・有楽町の東京交通会館に設定。開催時間も初日はOLの会社終わりに合わせて16時から開催し、3日間の会期中、2日間は夜8時までとした。また、一般の来場者が商品を手に取りやすいレイアウトを模索し、2年目からはブースの小間割を一般的な3m×3mから、3.5m×1.5mへと変更した。イベント運営や会場設計においても、B to C展示会への転換が行われたのである。
 B to BからB to Cへ展示会の転換を果たした日本プラスチック日用品工業組合。そのチャレンジはB to C業界展示会による新しい商品マーケティングの機会を提示するとともに、商品やサービスが一堂に会する展示会には未知の可能性があることを教えてくれた。リアルの未来のためには、従来の常識とは異なる角度からニーズを捉える柔軟な発想が求められているのだ。
 
  
 

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