2種類の宿泊キャビンの仕様。キャビン内で立ち上がれる快適な宿泊空間を実現した。
今後の展開については来海氏は、「アジアの大都市こそ、こういうコンパクトで、優良なホテルが求められている」と語り、グローバルな展開を明言。さらに、来夏に京都に開業するファーストキャビンでは、宿泊キャビンがさらなる進化を遂げることを示唆した。
能見裕一氏(株式会社フィル・カンパニー 代表取締役社長)は、コインパーキングを生かしながら空中店舗をプロデュースする「フィル・パーク」事業を軌道に乗せ、東証マザーズ上場にまでこぎつけた。
その秘訣は、コインパーキングオーナーの悩みを理解する「ユーザーファーストの徹底」だったと解説。土地評価からテナント誘致まで「一気通貫」するサービスが誕生した経緯を語った。
フィル・パークの実例写真(左)とフィル・カンパニーがカバーする「一気通貫」の事業領域(右)
能見氏は事業収益性の高さもさることながら、フィル・パークの強みは「スペース・オン・デマンド(需要に応じた空間づくり)」であると分析。今後、人口減少が加速したときに、その強みがさらに際立ってくるはずと強調した。
研究セッション②「“シェアリングエコノミー”がもたらす『空間革命』
場を共有する新たな不動産活用法が
リアル空間に事業と活気をもたらす
研究セッション②は、「“シェアリングエコノミー”がもたらす『空間革命』」。人々の消費概念を所有から共有へと大きく変えているシェアリングエコノミー。空間シェアの領域で、市場拡大を牽引するプラットフォーマーたちが登壇した。
西浦明子氏(軒先株式会社 代表取締役/一般社団法人不動産テック協会 理事)はシェアリングビジネスにおける世界的な先駆者だ。まず、輸入雑貨を手軽にテスト販売したいという個人的な動機から、スモールビジネス向けの隙間空間のマッチングサービスを開発したことを紹介。
「軒先ビジネス」では最近、短期のポップアップストアの利用が伸びている点を指摘。また、駐車場シェアの「軒先パーキング」では地方自治体との協働で観光シーズンの駐車場不足を解決する取り組みが増えていることを紹介した。
軒先ビジネスを利用した野菜の直販(左)と軒先パーキングとアビスパ福岡との協業事例(右)
さらに、最近スタートした「軒先レストラン」についても言及。「飲食業は極めて廃業率の高いビジネス。初期投資をかけず、既存の飲食店を借りてトライアルができれば起業のハードルとリスクを下げられるはず」とサービスの意図を語った。
C to C空間シェアのマッチングサービスでは国内最大手の「スペースマーケット」からは、重松大輔氏(株式会社スペースマーケット 代表取締役社長/一般社団法人日本シェアリングエコノミー協会 代表理事)が登壇。事業の経緯とともに、メディアを活用したPR戦略を解説した。
さらに、天候に左右されるイベントを空間シェアで借りた家で行う「インドア花見」や「おうちバーベキュー」などの活用法を紹介。ユーザー視点の話題作りの重要性を説明した。
認知度をアップした話題性の高い物件(左)とユーザーの利便性を訴求する「インドア花見」(右)
また重松氏は、不動産賃貸は貸借期間が短くなるほど収益が大きくなる点を指摘。短期間での不動産利用を可能にするITインフラが増えれば、ビジネスとプライベートの両方で不動産の新たな活用方法が生まれる、と語った。
研究セッション③「“空間のクラウド化”が起こした『ライフスタイル革命』」
「IT×リアル」の可能性を探究し、
顧客の感動を呼ぶサービスを開発する
研究セッション③は、「“空間のクラウド化”が起こした『ライフスタイル革命』」。インターネットによってつながるリアル空間を、スマートフォンなどの端末によって活用できる「空間クラウドビジネス」。自社の事業が果たすべき意義を追求し、業界の常識を打ち破り、人々の暮らしに新たな価値をもたらした2人のパイオニアが登場した。
月森正憲氏(寺田倉庫 専務執行役員)は、創業68年を迎える老舗倉庫会社、寺田倉庫が培ってきた高い管理ノウハウを個人向け収納保管サービスに応用しようと考えたのがクラウドストレージサービス「minikura」の発想の原点だったと紹介。
その取り組みと機能のAPI化によって企業に対してminikuraという物流機能を「一瞬にして」提供できるようになったと説明した。
minikuraの物流倉庫(左)と事業パートナーと連携するAPIの概念図(右)
また、今後については倉庫業においてもAIの活用が必然となるとともに、「IT×リアル」に徹底的にこだわることを明言。ワインやアートなど資産価値のある物品の分野でもITを活用した展開を進めていく考えを示した。
minikuraを活用し、普段着のファッションレンタルサービス「airCloset」を開発したのが天沼聰氏(株式会社エアークローゼット 代表取締役社長 兼 CEO)である。天沼氏は女性が新たなファッションと出会う感動体験を提供するためにairClosetを立ち上げたことを紹介。
一人ひとりに向けた「パーソナルスタイリング」によって、固定概念の「外」にある洋服選びを実現したことを説明した。
専用のボックスで洋服3着が送られてくるairCloset(左)と物流と業務のフロー(右)
天沼氏は今後、感動価値に加え、時間価値が重要になることを強調。スマホとネット、ITによって得られる膨大な情報から、個人個人の人生にとって最適なモノをキュレーションするサービスにITを使って挑戦していきたいと語った。
Q & Aセッションと交流会で
来場者と登壇者が直接、意見交換
全セッション終了後、会場からの質疑応答が行われた。当日、会場にはディスプレイ業など空間ビジネスに携わる来場者も多く、セッションでは触れられなかった事業ノウハウなどについての質問が相次いだ。
フォーラム終了後、ホワイエでは交流会が実施され、登壇者と来場者が名刺交換や互いの事業について情報交換が行われた。
「にぎわい空間創出フォーラム2018」を終えて
にぎわい空間研究所 中郡伸一所長
「研究所創設から2年半が経過した。手探りで活動を続けてきたが、今回のフォーラムでは登壇者の方々の協力を得て、広く一般にこの1年間の研究活動の成果を提示することができた。今後もより研究を深化させ、リアル空間産業のあり方に一石を投じていきたい」(談)