「にぎわい空間研究所」は、リアル空間にしかできない新しいビジネス価値の在り方を研究します

第13回「魅惑の空間“横丁”でタイムスリップ」
Mini Column

第13回「魅惑の空間“横丁”でタイムスリップ」


2020.03.23facebook

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 日本の外食業界では今、「横丁」が熱いブームになっている。大きな駅の真ん前にある飲み屋街だというのに、魅惑的な小さな飲み屋が狭い一角に密集している。極端に狭く、暗く、古い空間が、日頃の都市的生活での自分を心地よく狂わせ、心地よく酔わせ、心地よいにぎわいを醸し出す。それが、横丁だ。

 表通りから一歩入った細く暗い路地に足を踏み入ると、おそらく昭和の路上風景とほぼ変わらず、ただ歳月が建物を黒ずませていった小さな飲み屋ばかりがそこにある。

 昭和にタイムスリップしたような雰囲気の中での飲食を楽しみ、店の古びた造作に癒されるのが、私はとても好きだ。

 大鍋を囲むコの字型のカウンター、壁一面のお品書き、並ぶ焼酎の瓶。余計な装飾なんていらない。にぎわう空間の中、人々が飲んでいる横で、昔話に耳を傾けながら飲むのが大好きである。

 近年活気が戻ってきた横丁には若い世代が多い。とりわけオシャレな女性も増えている。渋谷の「のんべい横丁」、新宿西口駅前ちかくの「思い出横丁」、そして歌舞伎町までぶらりと歩くと「新宿ゴールデン街」がある。欧米からの観光客が数多く訪れ、ハシゴ酒を楽しみながら夜遅くまでにぎわう場所として知られている。

 そして横丁の醍醐味といえば隣に座った見ず知らずの人ともすぐに打ち解けられること。共に杯を重ねれば、カウンターを囲む皆はもう仲間。人と人とのつながりが失われがちな昨今、昔ながらの温もりが残る場所として人々が求める空間であり、かつコミュニケーションの場でもある。

 昔も今も変わることなく、そこにあり続けてくれるにぎわう場所、横丁。今も私は、モンゴルから来たばかりの20年前の自分と、そしてこれからの自分に逢いに行く。

写真2
 
< にぎわいアドバイザー 池澤守の “ちょっと一言” >
懐かしいのに新しい。戦後の闇市や昔の色街をルーツとする横丁空間は、近代化に抗う昭和な感じの猥雑性と人の顔が見える小さなサイズ感が魅力です。

記事中の情報、数値、データは調査時点のものです。

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