研究員Report_06
「妖怪ウォッチ オフィシャルショップ
 ヨロズマート 福岡総本店」( キャラクターショップ)

にぎわい空間研究所
主任研究員 尾形茂雄 

キャラクタービジネスを進化させる
2.5次元ショップ
〜体感、没入、交流が生み出すコンテンツへの強い共感〜

 

 エンターテイメントの世界では、「2.5次元」という新たな表現形態が急速に支持を拡大している。その代名詞とも言えるのが「2.5次元ミュージカル」である。漫画やアニメ、ゲームといった2次元のファンタジーを、ミュージカルという3次元の現実世界で生身の人間が演じ、表現するものだ。
 
 2.5次元ミュージカルは、若手俳優やアニメの声優が物語のキャラクターに成り切り、作品の世界を忠実に再現する。あくまで2次元ファンタジーのリアル化であり、それゆえファンタジーとリアルの狭間にある2.5次元として分類されている。
 2.5次元ミュージカルは、巧みに設計された複合的な要因によって、観客の心を強く魅了する心的現象を引き起こす。
 上映されるミュージカルには役者のリアルな存在があり、肉体が躍動し、汗が飛び散る。観客は2次元世界には決してない「体感」に遭遇するのだ。その体感によって、観客はミュージカルによる物語世界に「没入」していく。さらに、観客は会場の一体感や作品への参加意識を感じながら、観客同士の「交流」までも育んでいくのである。
 
 2.5次元ミュージカルがもたらす体感、没入、交流といった体験は作品への強い共感を呼び起こし、強力なリピーターを生み出していくのである。一般社団法人日本2.5次元ミュージカル協会によると2.5次元ミュージカルは年々動員数を拡大しており、2015年の動員数は145万人で前年の128万人から大幅に伸びている。
 2.5次元ミュージカルの登場は、エンターテイメントに新たな可能性を提示しており、コンサートやキャラクターカフェ、作品の聖地巡礼といった分野でも2.5次元ビジネスが広がりをみせている。
 
 そして、平成28(2016)年7月に開業した「妖怪ウォッチ オフィシャルショップ ヨロズマート 福岡総本店(以下、総本店)」は、「2.5次元キャラクターショップ」の先駆的な事例と言える。私は店舗設計者として本プロジェクトに参画させていただいた。
 総本店は、妖怪ウォッチのゲームやアニメに登場する妖怪たちが棲む世界「妖魔界」の世界観をテーマしたキャラクターショップである。
 店舗デザインでは立体的な造形や映像装置を駆使して、メインターゲットである子どもたちが妖魔界の世界を体感できる空間を実現した。ディスプレイの面では子どもたちの目線の高さに配慮し、圧倒的な物量のぬいぐるみ商品などによって作品世界に引き込む感覚を導いた。また、来場者が妖魔界の世界を体感できるように、スタッフの接客教育を徹底し、スタッフ自身がこの世界の存在に成り切りながら雰囲気を盛り上げていくのだ。
 ハード、ソフト両面でのこういった体感によって来場客は妖怪ウォッチ、そして妖魔界の世界に没入していくのである。さらに、店舗内には物販エリアとは別に、ゲームエリアを設けて、妖怪ウォッチのゲームで遊ぶ子どもたちが交流できる場と機会を提供している。
 
 総本店は、2.5次元ミュージカルと同様に、環境での世界観の再現とスタッフの「成り切り」接客によって、来場客の体感と没入感を引き起こし、ゲームを通じた子どもたちの交流を実現しながら、店舗への共感、コンテンツへの共感を創出しているのだ。
 2.5次元ミュージカルの代表作である『テニスの王子様』の累計動員数は200万人を突破した。注目すべきは原作漫画の連載が平成20(2008)年に終了していることだ。連載終了後にミュージカル人気に火が付き、今なお新作の公演は続いている。つまり、2.5次元ミュージカルという表現が作品への共感を生み、「作品を陳腐化させない」という課題に大きく貢献しているのである。
 
 妖怪ウォッチというメガコンテンツで2.5次元ショップを実現し、ハードとソフトの両面から来場客の共感を増幅した総本店。その成功は今後、妖怪ウォッチというキャラクターが支持され続けていく上で重要な役割を担っていくだろう。そして、キャラクターショップというリアル店舗の今後を占ううえでも、エポックメイキングな事例と言えるのだ。
 

 研究Report_06

2.5次元ショップ降臨
〜ファンが共感するリアル店舗の作り方〜
Vol.01

妖怪ウォッチ オフィシャルショップ ヨロズマート 福岡総本店(キャラクターショップ)

  編著:にぎわい空間研究所編集委員会

 
 平成28(2016)年7月1日、福岡市の複合商業施設、キャナルシティ博多に「妖怪ウォッチ オフィシャルショップ ヨロズマート 福岡総本店(以下、総本店)」が開業した。人気コンテンツ『妖怪ウォッチ』の常設公式ショップとしては東京・豊洲に次ぐ2店舗目だが、「世界のフラッグシップショップ」として「総本店」と位置づけられた。同店のプロデュースおよび運営を手がけるのは妖怪ウォッチのライセンサー(著作権の実施許諾者)である㈱BIGFACEだ。
 
 妖怪ウォッチには妖怪たちの棲む「妖魔界」が登場するが、総本店ではその世界観を再現している。店舗のファサードでは入口の両脇に巨大な提灯を設けるとともに、まばたきをする目の映像が来場者を迎える。店内の天井や壁にも妖魔界の雰囲気を醸し出す立体感のある装飾が施され、レジカウンターでは「妖魔特急」を立体的に表現する懲りようだ。
 

 
 
 ショップエリアの奥にはプレイコーナーが設けられた。アーケードゲームや、フォトスポットなどがある。ここは妖魔界にあるテーマパーク「ゲラゲランド」の設定。ゲームの他に妖怪ウォッチの醍醐味であるメダルのコレクションを紹介するディスプレイなどもあり、子どもたちが真剣に見入っている。さらに、総本店入り口の隣には、劇中に登場するパン屋「アッカンベーカリー」の常設店舗もオープンした。
 
 
 
 
 
 
   とにかく総本店という名にふさわしい徹底した世界観の再現である。近年、ゲームやアニメの世界をリアルに再現する「2.5次元ミュージカル」が話題になっているが、総本店はまさにゲームやアニメで展開されている世界を再現した「2.5次元ショップ」と言えるだろう。
 
 
 

ヨロズマート店内の平面図。
通路から建物内に入るとまず「アッカンベーカリー」①が現れる、「総本店」はメインの物販コーナー②と、ゲームコーナー③に分かれている。

 
 
 開業翌日の土曜日には午前9時過ぎの時点で150人の入場整理券の配布が完了した。整理券は30分ごとに150名が入場できる設定だが、10時のオープン時には12時までの整理券を配りきっていた。
 

開業翌日の初めての土曜日の開店前の様子。
整理券を受け取った人々は入場時間まで施設内を回遊するので、
キャナルシティ博多全体への波及効果もあるようだ。

 
  子どもたちのはしゃぎぶりが印象的だ。開店を前に入れない理由が分からずに泣き出す子どもまでいた。「欲しいものばかりで、息子はとても興奮しています。豊洲に連れていってほしいとせがまれていたので福岡にお店ができて嬉しいです」と話すのは小学生の男の子と訪れていた福岡市在住の主婦。他の母親も「子どもたちのはしゃぎようは尋常じゃない。お財布がどこまで続くか不安です」と話していた。
 

 
  週末は親子連れが中心だが、平日は20代から30代の大人の客も多く、明らかに自分用の商品を購入している。商品棚をよく見てみると、今治のタオル、メラミンのカップ、スマートフォンケースなど大人が使っても満足する商品も数多くある。妖怪ウォッチは全世代に愛されるコンテンツづくりを目指してきたというが、商品づくりでもその考えが実践されているようだ。
 
 

幅広い世代に愛されている妖怪ウォッチ。大人の来場客も多い。
「年の離れた兄弟と共通の話題を作ろうと妖怪ウォッチのゲームを始めたが自分がはまってしまった」と
語る20代の男性もいた。

 
 
 
  熊本市からオープン初日に駆けつけた20代の女性は「運良く会社が休みだったので来ました。豊洲にも何度も通っていたので、九州にお店ができると聞いて楽しみにしていました。店内の装飾も見応えがあって楽しかった」と語る。さらには、香港から来ていた家族連れの観光客も「妖怪ウォッチは香港でも大人気。子どもたちは大好きです。ウェブサイトでチェックして来ました」と興奮気味に語り、抱えきれないほどのグッズを爆買いしていた。
 

香港から来ていた来場客。
アニメのテーマ曲が流れるとキャラクターのTシャツを着た子どもたちは踊り出した。
海外での人気を物語るワンシーンだ。

 
 
 総本店では、開業からの3日間で購入者数3,000人、さらに7月の1カ月間で購入者数は16,000人に達した。来場者の数もさることながら、総本店には従来のキャラクターショップにはない熱気がある。どうやらそれは妖怪ウォッチの人気から来るものだけではなさそうだ。本稿ではその秘密を探っていきたい。
 
 

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名称:妖怪ウォッチ オフィシャルショップ ヨロズマート 福岡総本店
種別:キャラクターショップ
企画・運営:株式会社BIGFACE
開業:201671
営業時間:10:0021:00(定休日:無休)
所在地:福岡県福岡市博多区住吉1-2-1 キャナルシティ博多 ノースビル2
店舗延べ床面積:386.8
施設概要:物販エリア、プレイエリア、アッカンベーカリー