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研究レポート

「第31回オリンピック競技大会2016 リオデジャネイロ」 (スポーツイベント)【前編】

リオ五輪の裏側を探る〜競技会場と周辺設備〜

2016.09.30 facebook
編著:にぎわい空間研究所編集委員会

 平成28(2016)年8月5日から21日まで、ブラジルのリオデジャネイロで「第31回オリンピック競技大会 2016/リオデジャネイロ(以下、リオ五輪)」が開催された。4年に1度のスポーツの祭典、オリンピックが南米大陸で開催されるのは初めてのことであり、ブラジルという新興国がどのようなオリンピックを実現するかに注目が集まっていた。
 本稿では、現地視察を行ってきた宮下和久主席研究員からヒアリングした内容と写真を中心に、テレビでは映し出されることのなかったリオ五輪の裏側を紹介していきたい。
仮設の競技会場を利用しながら
すべての競技に対応したリオ五輪
 リオ五輪の競技会場は、リオデジャネイロ市の4エリアに点在している。高級リゾートとして名高い「コパカバーナ地区」。開会式・閉会式が開催されたスタジアムが位置する「マラカナン地区」。常設のスタジアムが集積する「バーラ地区」、そしてラグビーや陸上ホッケーなど仮設のスタジアムが設けられた「デオドロ地区」である。それぞれのエリアは鉄道や地下鉄、そしてオリンピック専用のバス「BRT」などの公共交通で結ばれている。
ライブビューイングで客席を補うプランの導入を
 
 競技会場は、既設の施設を利用したものと、今回のリオ五輪のために設けられた仮設の施設に大別できる。また、それぞれの施設への動線においても仮設の通路や歩道橋が数多く設置されたのもリオ五輪における特徴である。
 前編となる本稿では競技会場を中心とした施設に注目し、以下の6つについて競技施設とその周辺のインフラ、競技会場、サインなどの施設を中心に紹介する。
①バーラ五輪パーク(Barra Olympic Park):バーラ地区
②五輪スタジアム(Olympic Stadium):マラカナン地区
③五輪ゴルフコース(Olympic Golf Course):バーラ地区
④デオドロ競技場(Deodoro Stadium): デオドロ地区
⑤ビーチバレーアリーナ(Beach Volleyball Arena):コパカバーナ地区
⑥Tokyo2020ジャパンハウス(Tokyo 2020 JAPAN HOUSE):バーラ地区
【①バーラ五輪パーク(Barra Olympic Park)】
 さまざまな競技会場が集積する「バーラ五輪パーク」。パーク内には案内サインが設置されているが、表記はポルトガル語と英語のみである。ボランティアを配置し、対人での案内でサインの少なさをフォローしている。仮設のテニススタジアム「五輪テニスセンター(Olympic Tennis Center)」では、曲線のスタンドを実現。日本では例のない工法を採用していた。また、フェンシング競技が行われた「カリオカアリーナ3(Carioca Arena 3)」でも、スタンドの座席はほとんどが仮設であった。

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をバーラ五輪パークの全景。VISAのパートナーブースのジオラマ

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を会場最寄りのBRT(オリンピック専用バス)の駅。ボランティアが案内

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を会場へと続く専用道路。両脇には仮設のフェンスが設けられている

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をパークと公共交通機関を結ぶ道路。仮設の歩道橋で線路を越えていく

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を五輪テニスセンター。仮設ながらも曲線の形状を実現しているのが特徴

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を白いテントの奥には各競技会場のチケットブースが設けられている

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を国際メディアセンターの外観

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をNHKが中継で使用した仮設スタジオ。コンテナの上に設置されている

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をスポンサー名が表示されたサイン

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を各競技会場へと分かれる場所ではボランティアがアナウンスで案内

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をフェンシングの競技会場の「カリオカアリーナ3」

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を

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ライブビューイングで客席を補うプランの導入を

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【 ②五輪スタジアム(Olympic Stadium)】
 陸上競技が行われた「五輪スタジアム」は、男子短距離走のウサイン・ボルト選手の100m、200m、4×100mの3連覇で湧いた会場だ。スタジアムそのものは常設の施設だが、スタンドには仮設の座席も設けられており、VIP用のエリアも見受けられた。スタジアム内には既設の広告サインなどは見受けられなかった。

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を会場内部に入るとマスコットキャラクターのウェルカムボードが出迎える

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をスタジアムの案内サイン。ここで東西に分かれる。英語とポルトガル語のみ

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を陸上のトラック種目、フィールド種目の競技会場である五輪スタジアムの入口

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をスタジアムのロビー。公式グッズのショップや飲食の売店などがある

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をボランティアセンターの受付

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をスタジアム内部。手前が100m走の競技トラック。テレビカメラを配備

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をスタジアムから仮設の通路を経て、鉄道の駅に向かう

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を鉄道の駅とスタジアムは歩道橋で結ばれている

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を

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ライブビューイングで客席を補うプランの導入を

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【 ③五輪ゴルフコース(Olympic Golf Course)】
 リオ五輪では112年ぶりにゴルフがオリンピック競技として復活をした。会場となったゴルフ競技場「五輪ゴルフコース」は、今回の五輪のために造成された。競技エリアの周辺は砂利の地面が広がり、養生用の樹脂パネルを敷き、来場者の通行ルートを形成した。18番ホールの付近にはスタンドだけでなく、VIP専用の仮設の施設が設けられていた。

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を幹線道路からゴルフ競技場へのエントランスエリア

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をチケットブース。砂利の地面には樹脂製の養生が敷かれている

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を大型のLEDモニター。来場者は手前にある飲食エリアから視聴できる

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を会場の誘導サインとゴルフコース全体の案内図

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をコース内部に設置されたスコアモニター。順位や選手紹介を表示する

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を18ホールのコース。左手は仮設のスタンド、奥のテントはVIP用のエリア

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を中央は仮設のスタンド。タワーは空中撮影用のカメラのワイヤを設置するもの

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を左手はVIP施設。入口にはスタッフが立ちVIP用チケットを持った人々を出迎える

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を仮設のテントではゴルフという競技を紹介する展示が行われていた

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を

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【 ④デオドロ競技場(Deodoro Stadium)】
 ラグビー7人制競技が行われた「デオドロ競技場」の周辺には、陸上ホッケー、射撃、馬術などの競技会場が集積するとともに、パブリックビューイングなどのイベントエリア「Xパーク」も設けられた。ラグビーなどブラジルで盛んでない競技に関しては、ほとんどが仮設施設での対応となった。

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を競技会場周辺の道路は封鎖され、軍の装甲車や兵士が警備にあたっている

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を公共交通から競技会場エリアへと向かう来場者専用の通路

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を専用通路を経て、仮設の歩道橋で線路を越えるとラグビーの競技場が現れる

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を線路を越える仮設歩道橋の全景

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をラグビーと陸上ホッケー共通のチケットブース。当日券を販売する

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をスタジアムの入口。仮設のスタジアムであることが一目瞭然である

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をスタジアムのスタンドとフィールドの全景(左側)。

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をスタジアムのスタンドとフィールドの全景(右側)。

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をスタジアムの1人がけボックスシート。ひな壇状の箱にビス止めで設置

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をスタジアムの4端は曲線を描くスタンドになっている

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を曲線のスタンドの裏側。曲線状の仮設スタンドの事例は日本では稀有

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を

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【 ⑤ビーチバレーアリーナ(Beach Volleyball Arena)】
 リオデジャネイロ屈指の高級リゾートエリア、コパカバーナビーチには、現地でも人気のあるビーチバレーの競技アリーナが設けられた。高さ7階程度の仮設スタジアムが建つのは砂地の地面。五輪のロゴをあしらった懸垂幕で内部構造を隠しているのは一部のみである。

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をコパカバーナビーチにある仮設スタンド「ビーチバレーアリーナ」

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を正面部分のみ五輪のロゴをデザインした懸垂幕が設置されている

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をコパカバーナビーチにある仮設スタンド「ビーチバレーアリーナ」

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を正面部分のみ五輪のロゴをデザインした懸垂幕が設置されている

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を

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【 ⑥Tokyo2020ジャパンハウス(Tokyo 2020 JAPAN HOUSE)】
 リオデジャネイロ市では2020年の東京五輪と日本を紹介する「Tokyo2020ジャパンハウス」も登場した。メイン会場はアルヴォラーダ駅の近隣にある博物館1階部分のピロティ部分。東京五輪の概要、全都道府県の紹介、日本文化の実演・体験コーナー、そしてロイヤルスポンサーの紹介ブースなどが設けられた。

ライブビューイングで客席を補うプランの導入をTokyo2020ジャパンハウス入口。メインのサインと会場の案内図

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を東京五輪の概要とロゴを紹介するディスプレイ

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を応援メッセージボード

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を日本の全都道府県の特徴を写真で紹介した展示

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を日本文化の体験コーナー。茶道、浴衣、書道、ヨーヨー釣りを体験できる

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を東京五輪2020パートナー各社も出展。写真はアシックスの展示エリア

ライブビューイングで客席を補うプランの導入を

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ライブビューイングで客席を補うプランの導入を

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日本人らしいクリエイティブな発想で
会場不足を補う方法論を模索する
 今回の写真レポートからも分かる通り、リオ五輪では仮設のスタジアムやスタンド、通行路、歩道橋などが多用された。現在、2020年東京五輪の組織委員会では、リオ五輪にならい、仮設の施設によって15万席ほどを用意する方針である。しかし、日本は地震国であり、仮設の競技会場を作って数万人単位の人々を収容するには安全性の問題がある。
 必要な観覧席を提供するには、仮設の施設に固執するだけでなく、シネマコンプレックスやライブハウスに競技中継を配信するライブビューイングなど、日本が培ってきたノウハウやインフラを活用する方法もある。リオ五輪でブラジルの人々が仮設施設で予算難を乗り切ったように、東京五輪には日本の独創性で競技場と客席を整備する方法があるはずだ。
 クリエイティブな発想と新しい方法論に挑戦する実践力。それこそが、日本が2020年の東京五輪を通じて得られることなのだ。
 次回『リオ五輪の裏側を探る【後編】』では、競技会場でのセキュリティやホスピタリティ、会場同士をつなぐ公共交通などインフラを紹介していく。(了)

記事中の情報、数値、データは調査時点のものです。
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