編著:にぎわい空間研究所編集委員会
話題の「テック化」を議論するフォーラムに
幅広い業界から約210名が参加
令和元(2019)年12月3日、「にぎわい空間創出FORUM 2019」が東京の江東区深川江戸資料館小劇場にて開催された。主催は同実行委員会、共催は株式会社フジヤ。企画・運営をにぎわい空間研究所が担当した。
今年で3回目の開催となる「にぎわい空間創出FORUM」のテーマは、不動産業界のテック化にフォーカスした『空間革命2「テック化」がもたらす空間ビジネスの未来』。不動産テック協会の代表理事が不動産テックの最新トレンドを解説するとともに、その革命的な事例として「軒先レストラン」「OYO LIFE」の事業責任者が登壇し、テック化によって空間ビジネスにどのような革命が起きているかを明らかにした。当日、会場には幅広い業界から約210名の参加者が来場した。
セッションは5部構成。イントロダクションでの概要解説を受けて、セッション①から③では、それぞれのテーマに関する講演者と担当研究員が登壇。まとめとなるトークセッションでは、にぎわい空間研究所アドバイザーの池澤守氏がモデレータを務め、講演者と研究者たちが議論を深めた。
まず、イントロダクションとして、にぎわい空間研究所所長、中郡伸一が登壇。開会を宣言するとともに、「胎動する空間ビジネスのテック化と“ディスプレイテックの未来”」と題するテーマ解説を行った。中郡は、今回のフォーラムの骨子となる産業のテック化の潮流を解説に加えて、各セッションの導入を紹介するとともに、空間ビジネスのテック化 “ディスプレイテック”についても例を挙げながら実現の可能性を提示した。
研究セッション①「不動産テック革命の最新トレンド研究」
不動産テックが進行する業界の背景と
国内外の豊富な事例から現状を解説
研究セッション①は、「不動産テック革命の最新トレンド研究」。宮大悟主任研究員のテーマ解説の後、一般社団法人不動産テック協会の発起人であり、代表理事を務める赤木正幸氏が登壇した。
赤木氏は不動産業界の背景と不動産テックの進行状況を詳細に報告するとともに、海外の最新事例を紹介。最新の不動産テックカオスマップも解説し、依然、参画企業が増加しているものの、すでに一部のカテゴリーでは淘汰が始まっていることに触れた。
さらに、異業種での産業のテック化の可能性についても踏み込み、「テック化に投資した時の効果の出方は業界によって大きく異なります。IT化が進んでいない伝統的な業界に入れた時のほうが効果が大きい」と解説した。
研究セッション②投資ゼロで起業できる!飲食店革命「軒先レストラン」
飲食店の新たな起業モデルを
豊富な事例とともに紹介
研究セッション②は、不動産テックの具体的な事例である「軒先レストラン」がテーマ。「投資ゼロで起業できる!飲食店革命『軒先レストラン』」と題するセッションに関して、入谷義彦主席研究員がテーマを解説。続いて、株式会社吉野家ホールディングスグループ企画室特命担当部長の武重準氏が登壇した。
武重氏は、経営が難しい飲食店の現状に直面するなかで、巷で広がっている間借りカレーというムーブメントから間借りでの飲食店起業モデルを着想。自身が企画し、軒先株式会社とともに立ち上げたプラットフォーム「軒先レストラン」の仕組みを紹介するとともに、店舗オーナー、出店する飲食店の実例を数多く挙げながら解説を行った。
さらに、吉野家ホールディングスが軒先レストランをはじめとする新規事業に取り組む展望として「2025年までに飲食業のあり方を変える。本日ご紹介したような個性的な飲食店経営者とともに、飲食業のあり方を変えていきたい」と語った。
研究セッション③スマホで手続き完了!賃貸住宅革命「OYO LIFE」
先端のテックで住の新たなインフラを構築する
ビジネスの狙いと具体的な方法論に言及
研究セッション③は、不動産テックのふたつめの具体的な事例「OYO LIFE」がテーマ。「スマホで手続き完了!賃貸住宅革命『OYO LIFE』」と題するセッションに関する福美かおり主任研究員のテーマ解説を受けて、OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN株式会社の東京ゼネラルマネージャー、種良典氏が登壇した。
種氏はグローバルブランドであるOYOの日本上陸の経緯について解説するとともに、スマホひとつで部屋を借りられるOYO LIFEのビジネスモデルを紹介。利用者が享受できる利便性に詳細に説明しつつ、賃貸不動産サービスへの進出はテック企業であるOYOにとって、消費者のLTV(Life Time Value)を獲得するチャンスであると語った。
種氏は、「OYO LIFEは住のインフラであると認識しています。OYO LIFEという生態系に住む方々に、便利なサービスを提供したい。今後、OYO LIFEが広がれば、スケールメリットが生まれ、究極的には便利なサービスを安く提供できると考えています」と展望を語った。
トークセッション 「テック化」がもたらす空間ビジネスの未来
登壇者のクロストークで
テック化へのヒントを浮き彫りに
3つの研究セッションを踏まえ、締めくくりとしてトークセッションが行われた。テーマは、「『テック化』がもたらす空間ビジネスの未来」。3人の講演者、担当研究員、そして中郡所長が登壇。モデレータは、にぎわい空間研究所アドバイザーの池澤守氏(株式会社池澤守企画代表取締役)が務めた。
池澤氏は「3名の方々の貴重な講演を踏まえて、テック化に関する議論を深めていきたい」と語り、トークセッションをスタート。各セッションの研究員がそれぞれの登壇者に質問を投げかけるとともに、研究員や講演者のクロストークが行われ、議論が深められた。またディスプレイテックの可能性についても意見が交わされ、テック化には企業での内製化が重要など、示唆に富んだ発言が数多くなされた。
池澤氏は「登壇した方々から意義深い、ディスプレイテックの未来を描けるようなお話を聞けました。リアル空間産業のテック化に向けて、みなさまもテック化と向かい合ってはいかがでしょうか」と会場の来場者に呼びかけて、フォーラムを締めくくった。
劇場内でのプログラム終了後、「交流セッション『ロビーパーティ』」が開催された。飲み物と軽食も提供されたが、ケータリングでは軒先レストランの利用飲食店「プラント×プラント」「有頂天うどん」が参加。バラエティに富んだサンドイッチやボリュームのあるオードブルを提供した。
パーティでは、共催である株式会社フジヤの代表取締役社長、永田智之氏が挨拶。登壇者への感謝の意を伝えるとともに、フォーラム開催の成果を語った。会場では、来場者と登壇者の交流、来場者同士の意見交換などが和やかな雰囲気のなかで行われた。
「にぎわい空間創出フォーラム2019」を終えて
にぎわい空間研究所 中郡伸一所長
「にぎわい空間研究所では設立以来、一貫してリアル空間産業の未来を切り拓くための研究を行ってきた。今回のフォーラムでは、時代の潮流であるテック化に焦点を絞り、中心的な存在のプレイヤーの方々の協力を得られたことで、充実したコンテンツを構成することができ、また来場者の方々と貴重な時間を共有できた。研究所では今後、リアル空間ビジネスのテック化がどのように進化するべきか、 “ディスプレイテック・カオスマップ”の可能性も含めて、さらなる研究を推進していきたい」(談)