研究員Report_14
「スペースマーケット
(スペースシェアサービス)

にぎわい空間研究所
所長 中郡 伸一

消費行動を “所有”から”共有”へと変化させ、
未活用資産を活用する“シェアリングエコノミー”
〜“B to C”からC to C”への劇的パラダイムシフト

 

 日本の産業と社会は今、共有型経済「シェアリングエコノミー」の登場によって劇的なパラダイムシフトを遂げようとしている。
 
 シェアリングエコノミーとは、「個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む)を、インターネット上のマッチングプラットフォームを介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」である(※1)
 
 つまり、「事業者から消費者へのサービス提供(B to C / Business to Consumer)」という既存の経済システムは、シェアリングエコノミーによって「消費者から消費者へのサービスの提供(C to C / Consumer to Consumer)」へとシフトしているのだ。
 
 シェアリングエコノミーのカテゴリーは大きく分けて「空間」「モノ」「移動」「お金」「スキル」の5つである(お金とスキルを合わせて「リソース」とし、4カテゴリーとする場合もある)。
 
 
 
 サービスの提供者と利用者のマッチングは、「シェア事業者」によって設けられたインターネット上のデジタルプラットフォームを通じて行われている。シェア事業者は利用料の支払いを仲介し、マッチングの手数料を徴収し、収益としている。
 
 現在、世界ではシェアリングエコノミー市場は爆発的に拡大しており、平成25(2013)年に約150億ドルだった市場規模は、平成37(2025)年には約3,350億ドル規模へと成長すると予測されている(※2)
 
 また、日本国内でのシェアリングエコノミーの市場規模は年間18.0%で成長し、平成33(2021)年度には1,070億9,000万円に達するという推計もある(※3)
 
 シェアリングエコノミー市場の規模拡大の背景には、「欲しいものは所有せず、他人と共有すればよい」という消費者の価値の変化がある。
 
 とりわけ、その傾向は「ミレニアル世代」に強い。ミレニアル世代とは、2000年以降に成年期を迎えた、情報リテラシーに優れ、多様な価値を受け入れる傾向にある世代であり、現在の20歳代から30歳代半ばの若者たちである。
 
 ミレニアル世代は、他の世代と比べてフリマアプリの利用頻度が高いなど、「自分のものを他人に共有したり、他人のものを間借りすることに抵抗はない」という傾向が強い。総務省の『情報通信白書』では「若年層はリアル空間においてもシェアリングへの抵抗感が低い可能性がある」と指摘している(※4)
 
 今後、ミレニアル世代が社会で決定権を持つ層になっていくにつれて、シェアリングエコノミーはより一層の深化を遂げていくことが予測される。その先の未来には、「所有」から「共有」へと、消費のあり方を根底から変えてしまう”消費革命”が待ち受けているのかもしれないのだ。
 
 今回のレポートで取り上げる「スペースマーケット」は、未活用空間の利用をマッチングするシェア事業者である。すでに1万2,000件のロケーションが登録され、パーティや撮影、イベント、宿泊などの膨大な数のマッチングが行われている。その利用は急速に拡大しており、平成29(2017)年は成約ベースで前年同月比300%もの伸びを示している。
 
 約1,000万件存在していると言われる収益化が可能な国内の遊休スペース。スペースマーケットは、巨大なC to C空間シェア市場の開拓へ果敢に挑戦し、新たな市場の創出を牽引するマーケットリーダーとしての地位を確立しつつある。未活用空間ビジネスの今後を予測する上でも同社の動向から目が離せないのである。
 
 
 
 
 
 
<出典>
※1 『シェアリングエコノミー検討会議中間報告書-シェアリングエコノミー推進プログラム-』(内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室シェアリングエコノミー検討会議、2016年11月)
 
2「『平成27年度版 情報通信白書』「第2部 ICTが拓く未来社会 第2節 ソーシャルメディアの普及がもたらす変化 (1)シェアリング・エコノミーとは」(総務省)
 
3『シェアリングエコノミー(共有経済)市場に関する調査を実施』 (㈱矢野経済研究所、平成29(2017)年11月15日プレスリリース)」
 
4 『平成29年度版 情報通信白書』「第1部 特集 データ主導経済と社会変革 第1節 スマートフォン社会の到来 (3) 先進ユーザー「ミレニアル世代」の利用動向」(総務省)
 
 
 
 研究Report_14

遊休空間を発掘し、潜在ニーズを掘り起こす
〜個人間で未活用空間を有料シェアできる仕組みを確立〜

「スペースマーケット」(スペースシェアサービス)

編著:にぎわい空間研究所編集委員会 
 
 
登録物件は約1万2,000件
成約件数は対前年同月比300%
 
「スペースマーケット」は、空間を借りたい人と貸したい人をインターネット上でマッチングするデジタル・プラットフォームである。
 空間を借りたい人と貸したい人をインターネット上でマッチングする
スペースシェアサービスを提供する「スペースマーケット」。
 
 どこか空間を借りてパーティや会議、撮影などをしたい人(ゲスト)は、まず「スペースマーケット」のアプリやサイトでユーザー登録をする。そして、1万2,000件にも及ぶ登録物件から、場所や目的、料金、雰囲気、設備などの条件が合った空間を選び、アプリを通じて空間の登録者(ホスト)にコンタクトをする。
 
 
スペースマーケットのウェブサイト(左)とスマートフォンアプリ(右)
 
 
 質問や下見をしたうえで、気に入れば使用希望をアプリやサイトを通じて申請し、ホストが承認すればレンタルの契約が成立する。使用料はクレジットカードによる事前決済。何らかのかたちで鍵の引き渡しが行われ、当日の使用、現状復帰での使用完了に至るという流れである。
 
 空間探しからホストとのコミュニケーション、さらには支払いまでをアプリやサイトで、ワンストップで行えるスペースマーケットは平成26(2014)年4月のサービス開始以来、急速に拡大してきた。当初100件程度だった登録物件数は平成29(2017)年12月現在で1万2,000件にまで拡大。毎月、約1万件にも及ぶ取り引きの照会が行われており、2017年の成約件数は対前年同月比で300%という驚異的な伸びを示している。
 
 個人、法人、ともに登録、利用できるが、現在は個人による利用が全体の7割を占め、現在、個人利用は急速に伸びている。スペースマーケットは、個人と個人が未活用空間を有料でシェアできる仕組みを確立した画期的なデジタル・プラットフォームなのである。
 
スペース登録数は2014年10月に1,000件を突破。2017年12月現在では1万2,000件にまで拡大している。

 

 
 
 
未活用空間が加速度的に増加する日本で
空間のマッチングをするサービスを開始
 
 このサービスを提供する㈱スペースマーケットを率いるのは代表取締役兼CEOの重松大輔氏である。重松氏がスペースマーケットのビジネスを発想したのは前職の㈱フォトクリエイトで働いていた時のことだった。
 
㈱スペースマーケット代表取締役兼CEOの重松大輔氏。
 
 フォトクリエイトはスポーツ大会などのイベントにカメラマンを派遣し、インターネットを通じて写真を販売する会社である。なかでも結婚式の披露宴でのシェアは大きく、全国にある結婚式場の約25%で写真撮影を手がけている業界最大手だ。新規事業開発の担当だった重松氏は、結婚式場から「平日に施設の利用を伸ばす方法はないか」という相談をされていた。結婚式が行われるのは主に土日祝日。平日は施設が稼働していない結婚式場がほとんどだった。
 
 同じ頃、重松氏は自社のセミナールームが使われていない時に、知り合いの会社や学生に貸し出すサービスを試験的に始めていた。使われていない空間を時間単位で提供できれば、使いたいというニーズに応えられるのではないか、と重松氏は思った。
 
 時は平成25(2013)年半ば。世界を見渡すとシェアリングエコノミーが胎動していた時期で、民泊サービスのAirbnb(エアビーアンドビー)が急速に利用者数を拡大していた。日本国内でも会議室や研修ルームの利用の仲介やシェアオフィスなど空間をシェアする新たなビジネスに注目が集まり始めていた。一方で、少子高齢化と人口減少が本格化する日本では、空き家問題が深刻化していた。使われない空間が加速度的に増加している事実があった。
 
「これからは『場』のあり方が変わっていく」と強く予感した重松氏は、個人の所有する空間の有料でのシェアを可能にするネット上のマーケットプレイス(※)を日本で実現しようと決意する。そして、平成26(2014)年1月、未活用空間の時間単位での貸し借りをマッチングするベンチャー企業、㈱スペースマーケットを起業し、同名のサービスを開始したのである。
 
 起業した当時、会議室などの検索サイトはすでに存在していた。それらは物件情報や広告の掲載料を基盤としたビジネスモデルだった。だが、重松氏はあくまで、空間を貸したい人と借りたい人のマッチングというサービスを購入してもらうモデルにこだわった。参考にしたのは、Airbnbや自動車配車サービスのUber(ウーバー)といった海外の先行事例だった。情報の掲載料は無料。ウェブサイトやアプリを通じてマッチングを行い、成約した場合にのみ取り引き額の30%を貸し手から、5%を借り手からマッチング手数料として受け取るというモデルを構築した。
 
 
スペースマーケットのビジネスモデル。
 

※ マーケットプレイス:モノを買いたい企業(バイヤー)と売りたい企業(サプライヤー)が自由に参加できるインターネット上の取引市場。(出典 ASCII.jpデジタル用語辞典)
https://kotobank.jp/word/マーケットプレイス-12096

 
 

法人間のアナログマッチングに注力し
マーケットプレイスの基盤を構築する
 
 

 将来的には個人間で空間を貸し借りする「C to C」の市場をメインにビジネスを展開したいと考えていた重松氏だが、インターネット上のマーケットプレイスは開設時にどれだけの物件が揃っているかがアクセスや利用に直結すると分析していた。そこで、法人同士の取り引き(B to B)から攻め、取り扱い物件と実際の利用の実績を作ることにした。
 
 物件の供給については、前述の披露宴会場、すでにシアターの貸し出しを始めていたシネマコンプレックス、知り合いの企業などに声をかけ、スペースマーケットへの登録を促した。一方で企業に営業を行いイベントの場としての活用を提案。起業からの約半年はマンパワーによるアナログマッチングが主体だった。

 

 
ユナイテッドシネマ豊洲で行われた会議。登壇者の写真を入れた映画風のポスターも製作。
 
 
結婚式場(左)やスタジオアルタ(右)で行われた企業イベントの様子。
 
 
 
 重松氏が意識したのは話題づくりによるサービスの認知度アップだった。お城、球場、島、お寺など一般的には借りることなど思いつかない空間の登録を獲得し、メディアからの注目度を高めていった。

 

 
大阪城(大阪市中央区)            猿島(神奈川県横須賀市)
 
 
メットライフドーム(埼玉県所沢市)      増上寺(東京都港区)

 

 
一方で、お寺など非日常的な空間で会議を行う「オフサイトミーティング」がよりクリエイティブな発想を生み出すことが話題になり始め、利用が徐々に増えていったのである。こういった会議室の需要は現在も伸び続けている。
 
鎌倉の古民家でのオフサイトミーティングの様子。
 
 
かつてない空間を使用するライフスタイルを
自社メディアを使って積極的に発信
 
 
「状況が変わったのは、平成26(2014)年10月のハロウィン。居酒屋やレストランではなく、どこか特別な場所でハロウィンパーティをしたいというニーズがあったのです。スペースマーケットに登録されている一軒家を使う『ハウスパーティ』に火が点きました。ここから個人の利用がぐっと伸びていきましたね」(重松氏)
 
ハウスパーティという新たなトレンドに火をつけたハロウィンパーティ。
 
 
 考えてみれば、他人の家を借りてパーティをすることなど、かつては想像もできなかったことだ。だが、素敵なパーティ空間の貸し借りを仲介するスペースマーケットのサービスが登場したことで、「私もそんなパーティがしたい!」という若者たちのニーズが顕在化したのである。
 
 ハウスパーティの例からも分かる通り、個人の空間を借りてイベントを行うのはどんなシチュエーションやイベントが可能かを想像することが必要だ。スペースマーケットでは、自社メディア「BEYOND(ビヨンド)」を立ち上げ、ユーザーの利用事例などを取材。実際にどのような使い方が可能か具体例の情報発信を積極的に行い、新たなニーズの開発を図っている。
 
 
スペースマーケットの自社メディア「BEYOND(ビヨンド)」。取材記事によってユニークなイベントやパーティを楽しくするノウハウを紹介するとともに、物件の情報も発信する。
 
 
 また、スペースマーケットでは、パートナー企業と提携しながら、飲食のケータリングや生演奏の提供を行うことで、ゲストがより簡単に、より楽しいパーティを実現するための支援をしてきた。現状は個別での問い合わせに対応するかたちだが、将来的にはすべてのオプションサービスをスマホアプリ上で発注・決済できるシステム構築を目指していく。
 
 演奏家マッチングサービス「LiveDeli」と連携してパーティでの生演奏を提供。
 
 
「パーティは行われる日が限られていますが単価は高く設定できます。一方の会議利用は平日の日中に使ってもらえます。会議利用で定期的に使ってもらい、パーティで稼ぐというのが、空間の理想的な活用法です」(重松氏)
 

レビュー機能、保険による補償、
コミュニケーションでホストの不安を払拭
 

 
一方のホスト側は、使っていない空間を時間単位、1日単位で貸すことで新たな収入を得られる。だが、見ず知らずの他人に貸して、物を壊されたり、汚されたりはしないか、そんな不安はあるのは当然だ。
 
 基本的に、玄関に監視カメラを設置すれば人の出入りは確認できるし、提供する空間にも監視カメラを設置し、使用中の様子を撮影することを条件に貸し出せば、トラブルが起きても事実を確認できる。
 
 だが、スペースマーケットでは①レビュー機能の充実、②保険による補償、③コミュミケーションの創出、といった独自の考え方と仕組みでホストの不安払拭に取り組んでいる。
 
 
①レビュー機能の充実
 まず、レビュー機能だ。「このプラットフォームではレビューが肝」と語る重松氏は、その理由をこう語る。
 
「知らない人の家を借りるわけだから、レビューが数十件付いていて、そのほとんどでゲストがホストに感謝していれば、安心してその物件を借りられます。一方のホストもゲストのレビューを書けるので、そのゲストがどのような使い方をしているかも明らかになり、貸すかどうかの判断材料にもなります」
 
 現在、スペースマーケットのゲストの半数以上、ホストの8割以上がレビューを書いているという。同社では、レビューを充実させるための研究を続けている。
 
 
 
 サイトでは物件情報の下に「評価とレビュー」の欄があるので使用者の感想を見られる。
ゲストの名前をクリックすればホストからのレビューの一覧が閲覧可能。
 
 
 
 
②保険による補償
 空間の賃借でトラブルが起きた場合、基本的には当事者同士での話し合いになるが、マッチッグする立場ゆえにスペースマーケットに相談が寄せられる場合も多い。現状ではほぼ問題はないが、今後、取り扱いの規模が拡大していけば、深刻な事態が起きないとは限らない。
 
 そこで、スペースマーケットでは損害保険ジャパン日本興亜㈱とともに保険商品を開発。10万円の保険金を払うことで、上限1億円の補償を可能にしたのだ。賃借の当事者でないスペースマーケットがゲスト、ホストの間で生じた損害を補償する画期的な保険である。
 
③コミュミケーションの創出
 ホストがゲストに空間を貸した時、そこにコミュニケーションが生まれる。そのコミュニケーションこそが、自分の空間を貸すという心理的障壁を下げるのだ。象徴的なエピソードを重松氏が語ってくれた。
 
「スペースマーケット設立時からの常連にコスプレーヤーさんたちがいます。例えば古民家を1日借りて、コスプレ衣装を着て、撮影会をする。田舎に古民家を持つホストにしてみれば、コスプレーヤーなど会ったこともないし、見たこともないから不安です。でも、一度、利用してもらえれば、コスプレーヤーさんたちは普通の人たち。使い方は丁寧で、飲食が目的ではないから汚さないし、お土産まで持ってきてくれる。それで1日で2、3万円の収入になるとすれば、ホストにとっては良いことづくめです。こういった体験を通じて、ホストは空間を貸すことに積極的になってくれるのです」
 
 
 
 
東京町田市の古民家(左)。
風情豊かな古民家を舞台に撮影を希望するコスプレーヤーも多い。撮影会の様子(右)。
 
 
 空間をシェアすることで生まれるコミュニケーションの喜びという成功体験を提供することもホストの心理的な障壁を取り払ううえで重要なのだ。もちろん、利用を重ねていれば、ホストも、ゲストも、時には嫌な思いをすることもある。だが、そこも含めて空間を有料でシェアするためのコミュニケーションを双方が学んでいくのである。
 
 新たなライフスタイルを提案し、人々の潜在ニーズを顕在化させる。ITや保険のかつてないシステムを開発するとともに、貸す側と借りる側のコミュニケーションの共創を促進する。スペースマーケットは不動産の仲介サイトではなく、未活用空間の活用による体験とコミュニケーションというかつてない価値を創出するイノベーター(革新者)なのである。 

IT技術、物件開発、企業支援など
進化を続けるスペースマーケット
 
 

 
 
 画期的なモデルである、スペースマーケットを支えるいくつかのポイントがある。
 
①エンジニアリングの内製化
 
 スペースマーケットの社員は約40人(平成29(2017)年時点)。そのうち、アプリやウェブサイト、システムの開発や運営に携わるエンジニアは16人に上る。ITに関わる業務は基本的に内製化し、利用料金の決済など特別な機能については専門的なシステム会社と連携を図る。重松氏はエンジニアリングの内製化についてこう語る。
 
「膨大な数の物件からゲストが求める空間を探してマッチングするデジタル・プラットフォームでは、アプリやサイトの反応速度がコンマ数秒遅れ、ストレスを感じるだけで受注率が下がります。ユーザビリティは常に改良をしていますが、この作業を外注したら膨大なコストがかかるので自社でエンジニアを雇用しています。もっとエンジニアの数を増やして、使いやすさを徹底的に研究していきたいですね」
 
 こういった技術力を背景に、スペースマーケットではスマホアプリを開発。ゲスト、ホストがともに空間の貸し借りに必要な作業をどこからでも行える環境を整えたのである。
 
 他にもレビュー機能、ポイント機能、直前5日間に予約した場合に割り引きが適用される「直前割」機能、ホストの承認なしに即時予約できる「今すぐ予約」機能、さらには後述する法人向けのサービス強化など利便性の高い機能を次々と実現してきた。高度なIT技術を社内で持っているからこそ、こういった機能が迅速に可能になり、類似のサービスとの圧倒的な差別化を図れるのである。
 
 
SPACEMAERKET BLOGでは、エンジニアやデザイナーが技術やデザインについて投稿する。
同社がエンジニアリングに力を入れていることを情報発信する。
 
 
②空間プロデュースによる優良物件の開発
 スペースマーケットでは、新たなホストが物件を登録する際に、これまで培ってきたノウハウやデータを生かし、情報掲載に関する基本的なコンサルティングを行う。同じ物件でも掲載する情報の質によって利用率が大きく変わってくるからだ。
 
「最も大きなポイントは写真です。Airbnbが急速に伸びた要因のひとつは写真の良さです。現実とかけ離れず、1~2割増しぐらいの見栄えの良さだと利用者の反応がよい。スペースマーケットでもホストに対して写真のアドバイスをするとともに、必要があれば撮影のご相談にものります」(重松氏)
 
 また、顔写真の掲載も重要だという。ホストがきちんと顔写真を掲載するだけで、ゲストの安心感は向上するのだ。
 
 前述の通りスペースマーケットでは月間に1万件にも及ぶ取り引きの照会が行われている。その情報があれば、今、どのような物件に需要があるかを導けるはずだ。蓄積してきた知見を生かしたのが自社運営物件の「fika(フィーカ)」である。
 
fika上北沢。北欧風の内装が人気。
 
 
 きっかけは重松氏の知り合いから古い住宅の活用を相談されたことだった。東京の小田急沿線、世田谷区上北沢にあったこの家は地味なマンションの一室であり、近隣の駅には急行列車も止まらない。そこでスペースマーケットのスタッフ自らがDIYでインスタ映えするような可愛らしい空間に改装した。すると、昼夜を問わず利用が相次ぐほどの人気の物件になった。
 
 
平成29(2017)年のハロウィンには、デンマークの雑貨ブランド「フライング タイガー コペンハーゲン」とのタイアップにも使われたfika上北沢。
 
 同社ではこの経験から、エリアの特性を踏まえて、物件の用途やデザインを提案し、改装のディレクションと運営を手がける「空間プロデュース事業」を強化した。fikaもすでに5物件にまで広がっている。なお、改装の投資は基本的に物件の所有者(ホスト)が負担する。
 

「空き家があると、そのエリアの不動産価値は下がります。人が住んでいなくても、誰かに貸して人の出入りがあるだけでも場の雰囲気は変わります。今後は鉄道会社や不動産会社と協業して空き家を活用する空間プロデュースをしていきます」(重松氏)
 
 

 fika桜上水(左)とfika新宿御苑(右)。それぞれにデザインのコンセプトが異なる。
 
 
 ちなみにfikaでは「スマートロック」を採用している。スマートフォンで鍵の開錠ができるシステムだ。時間単位での空間の貸借の場合、その物件にホストが住んでいなければ、鍵の受け渡しが課題になる。郵便ポストに入れておいてダイアルキーの番号を教えるといったオーナーも多いが、不安が残るのも事実だ。その点、スマートロックであれば開錠者として登録するURLを伝えるだけでよい。鍵のイノベーションは空間シェアに大きく貢献していくだろうと重松氏は指摘する。
 
③法人支援の強化
 現在、スペースマーケットでは、成約数ベースで7割が個人、3割が法人という比率だが、売上ベースでは約半分を法人利用が占める。法人の場合、周年事業や社員集会、社員研修、採用活動などの大きなイベントでの利用も多く、比較的、予算規模が大きい。「法人利用による収益をベースにして、その上に個人利用を積み上げていきたい」(重松氏)と考えるスペースマーケットでは、法人サービスの強化にも余念がない。
 
 
法人アカウント「SPACEMARKET×BUSINESS」。
 
 
 平成29(2017)年11月には法人向けのアカウント機能を設置するとともに、料金の月末締め請求書払いを可能にした。
 
 空間を借りる場合の利用料金の決済は基本、前払いであり、スペースマーケットの基本機能でも空間の賃借の契約が成立した時点でクレジットカードによる決済が行われてきた。
 
 従来、法人が利用する場合は、個人利用と同様にクレジットカード払いで決済してもらうか、利用前に請求書を発行して銀行振込してもらうかだった。だが、企業の場合、月間の使用料金を合算して月末に請求する方が都合がよく、そのシステムを導入してほしいという要望があった。法人利用は、創業以来、10倍以上のペースで伸びており、今回の法人向けシステムのさらなるニーズを見込んで月末締め請求書発行のシステムを導入したのである。
 
法人ゲストのスペース利用数は2年間で10倍以上に成長。
 
 
 もう一つの法人向けサービスはマーケティング支援である。今、インターネットを通じて商品を購入するのは一般的になった。その一方で、ハウスパーティが人気なように、ネットでは味わえない「リアルな体験価値」のニーズは以前にも増して高まっている。
 
 スペースマーケットでは、平成29(2017)年9月に企業へのマーケティング支援サービス「Memorable Moment Creation」をスタートした。同社では、企業からの依頼を受けて、パーティやイベントなどリアルな場での「人の心に残る瞬間づくり(Memorable Moment Creation)」を通じて、商品やサービスのブランディングを企画から集客、実施、情報拡散までをワンストップで提供する。こういった企画が可能なのも、膨大な数の空間の貸し借りのマッチングを通じて人々のリアルニーズを掴んでいるからと言えるだろう。すでにナショナルクライアントのプロモーションやサンプリングなどの案件を手がけている。

 

「Memorable Moment Creation」はマーケティングの段階に応じてイベントやキャンペーンを行なっていく。

 
 

「ポップアップショップのニーズが非常に高いですね。ショップで商品を確認して、ネットでモノを買う時代だからこそ、体験価値が重要になってきます。期間限定店に上質な顧客を呼んで、特別な体験をしてもらって、その場から公式サイトを通じて商品を購入し、現物は自宅に届ける。そんな販売スタイルが今後は増えていくと考えています」(重松氏)

 

 
平成28(2016)年12月4日~24日に開催された「とびっきりParty Market with PERRIER 」。ネスレ日本の発売するペリエのイベント。ペリエカラーの装飾を施した会場でペリエを使ったカクテルなどを提供。
 
 スペースマーケットに登録する法人会員は約100社。機能やサービスの充実によって法人会員をさらに伸ばしていきたい考えだ。
 
 

日本のシェアリング文化が発展するには
海外のプレイヤーと戦える法整備が必要
 
 
 
 重松氏は(一社)シェアリングエコノミー協会の代表理事を務める。同協会には約230社の企業が加盟しており、シェアリングエコノミーに関する情報発信や研究、官公庁との意見交換などを行っている。とりわけ協会を組織することで、今後の法整備にも関与していきたい考えだ。
 
  代表理事としての立場として重松氏は今後のシェアリングエコノミーの展望についてこう語る。
 

(一社)シェアリングエコノミー協会の代表理事としての顔も持つ重松氏。
同社スタッフも協会の活動に参加する。
 
 
「シェアできるものは、シェアされていくことを前提としています。海外でのシェアリングビジネスの普及はものすごく早く、日本は遅れています。中国では様々なシェアサービスが登場し、急速に普及しています。中国はスマホの電子決済が一般的だからイノベーションが早いですね。海外で成功しているモデルは、必ず日本にも入ってきます。インターネット時代の今、シェアリングエコノミーに携わる事業者は海外のプレイヤーと戦っていかなければならず、国内の法整備が発展の足かせにならないよう、ロビー活動を展開するのも協会の大きな役割です」
 
 そんな状況下でスペースマーケットは何を目指していくのだろうか?
 
 まずは、「空間を借りる=スペースマーケット」というブランドを確立することだ。現在、取り扱いのカテゴリーはパーティ、会議、写真撮影など11種類に及ぶ。いくつかのカテゴリーでは競合する他社サービスもあるが、ともにマーケットを拡大し、将来的にはすべてのジャンルでトップになっていくことをスペースマーケットは目指している。
 
 また現在、物件のロケーションは大都市圏が中心だが、今後は地方にも広げていく。まずは政令指定都市での展開を図っていき、その後全国に広げていきたいとしている。
 
 では、今後のビジネス拡大の要因は何だろうか? 重松氏は、①ユーザー数の拡大、②物件数の拡大、そして③使用頻度の向上の3点を挙げる。使用頻度の向上の重要性について重松氏はこう説明する。
 
 「よい物件というのは、使用頻度が高いですね。同じユーザーがパーティ、撮影、会議など様々な使い方をしてくれるケースが多いです。そういった利用をしてもらえれば、リフォームに投資をしても十分に回収できます」
 
 日本のシェアリングエコノミーの牽引役とも言えるスペースマーケット。その立役者である重松氏自身も最近の空間シェアの変化に驚いているという。
 
「最近では、独身の会社員が仕事で会社に行っている間に、自分が住んでいる部屋を貸し出している事例がありました。実際に撮影などにも使われています。スペースマーケットをやってきた4年間でも、使い方、貸し方はどんどん多様化しています」
 
 平成30(2018)年、スペースマーケットでは法律の施行に合わせて民泊のシェアサービスも開始する。シェアリングエコノミーという新たな常識が浸透し、環境が整備されていくことによって、今後もまったく思いがけない空間のシェアリングと新たなライフスタイルが生まれていくことは想像に難くない。空間シェアのデジタル・プラットフォームを構築したスペースマーケットが今後も新たなモデルづくりのトップランナーであり続けることに期待したい。
 
 年間18%もの勢いで成長が見込まれる日本国内のシェアリングエコノミー市場。様々なシェアサービスの登場によって、今後もサービスのC to C化に拍車がかかっていくはずだ。とりわけ、未活用空間ビジネスがシェアリングエコノミーの深化によって、どのように活性化していくか、今後も注視していきたい。(了)

 
 
 
 

<Date>

名称:スペースマーケット(SPACEMARKET) 

業種:スペースシェアサービス

サービス開始:平成26(2014)年4月

登録物件数:約1万2,000件(平成29(2017)年12月現在)
ウェブサイト:https://spacemarket.com
 

事業主体:株式会社スペースマーケット

本社所在地:〒160-0023東京都新宿区西新宿 6-15-1 ラ・トゥール新宿 608
会社設立:平成26(2014)年1月8日

資本金:2億5,374万7,150円

代表者:代表取締役社長 重松大輔
事業内容:「スペースマーケット」の運営/イベントプロデュース事業/プロモーション支援事業
ウェブサイト:http://spacemarket.co.jp