研究Report_05

リバーチャルで施設事業の制約を超える
〜謎解きのポータルメディア実現への挑戦〜
Vol.02

なぞともCafe(アミューズメント)

編著:にぎわい空間研究所編集委員会 

 
ポータルスタジオ「なぞときCafe」1号店誕生
10室のキューブで外部制作者の謎解きも公開
 

 
 
 平成26(2014)年8月、東京の新宿歌舞伎町のドン・キホーテビル7階に「謎ときポータルスタジオ なぞともCafe新宿店」がオープンした。浦田氏は新宿という場所の選定について、「謎解きは、友人など複数で挑戦した方が格段に楽しい。でも、参加する仲間が同じ地域に住んでいるとは限りません。そこで、参加者が集まりやすいターミナル駅への出店が必須となりました」と語る。
 
 店内は、受付カウンター、カフェ、そして10室の謎解き部屋「ミッションキューブ」によって構成される。ミッションキューブには、それぞれ異なる謎解きコンテンツが設定されている。来場者はカフェのメニューから体験したいミッションを選び、店内の端末で予約する。順番が来ると予約番号を呼ばれ、料金を支払った後、キューブへと案内される。謎解きの始まりである。
 
 
  
 
 
   興味深いのは10室の謎解きコンテンツは、その多くがナムコの自社制作ではなく、外部の謎解き制作団体による提供ということだ。ナムコではプロジェクトの始動以来、制作団体との関係構築を積極的に図ってきた。なぞともサイトの立ち上げ後は情報も集まるようになり、さらに関係が強まり、広がった。謎解きの制作団体は、小規模の団体や個人も多く、アイデアがあってもイベントを頻繁に実施するのは難しい。なぞともCafeにコンテンツを提供できれば、発表とビジネスの場を得られるのだ。言い換えれば、10室のキューブは謎解きコンテンツの受け皿なのである。

 

 
 
 
 

 なぞともCafeではコンテンツ制作者の名前を公表する。謎解きの分野では制作者にファンがついている場合も多く、人気制作者のコンテンツを公開できれば、集客にも大きく貢献するのである。まさにwin-winの関係であり、施設事業の概念を変える「リアル版のプラットフォーム」の実現と言えるだろう。そして、こうした強い関係性はなぞともサイトというバーチャルでの取り組みがあったからこそ実現したものなのである。

 

 ミッションキューブの広さは1室あたり10㎡だ。10室で100㎡。気になるのが、中央に配されたカフェスペースだ。広さ109㎡。ずいぶんと贅沢なスペースだが、実はこのカフェこそ、なぞともCafeのにぎわいの源泉なのである。
 

   

なぞともCafe新宿店のフロアマップ。
カフェを囲むように10室のミッションキューブが配置されている。

 
  

順番待ちで混雑したカフェこそが
キューブの利用を促す集客機能
 
「開業以前、期間限定の謎解きイベントを実施した際に、『会場にカフェを併設してほしい』という声がありました。イベントだと、プログラムを終えた参加者は会場の外に出されます。でも、みなさん体験した謎解きの話がしたい。結局、カフェや飲み屋に移動して話をする。それであれば、常設店舗ではカフェを併設しようということにしました」
 
  浦田氏はこう経緯を語るが、なぞともCafeの思い切ったところは、ドリンクなどの注文が必須ではないことだ。利用者は急かされることなく、どの謎解きを選ぶかを相談して、ミッションを終えた後はその余韻に浸れる。喉が渇けばドリンクを買えばいいし、フードやアルコールもあるので夕食にも利用もできる。話が盛り上がれば、もう一度ミッションに参加すればいい。
 
  内装はアメリカの映画やドラマ、小説に登場する探偵事務所をイメージさせるものだ。深い赤色を基調とした色使いはどこか隠微な雰囲気を漂わせる。謎解きにふさわしい空間での贅沢な時間。「ナムコ・ナンジャタウン」など都市型テーマパークを開拓してきたナムコの真骨頂とも言える世界観だが、そういった場の提供こそがミッションキューブの利用率を上げていると浦田氏は指摘する。
 
 「カフェといっても実際は待合室です。収益性を考えれば、カフェにもキューブを作り、お客様の回転率を上げるべきだと考えがちです。ただ、ナムコには長年培ってきたゲーム理論があります。空間を工夫すれば、利用者の『もうちょっとでできた』『他のゲームもやってみよう』という気持ちを作ることができます。カフェは家賃を払っているのに直接的な売上を生みません。でも、施設には必要な空間なのです。調査をしたところ、カフェの席数が多いほどキューブの利用率も高いことが立証されました。順番を待って混雑している状態がさらに人を呼ぶのでしょう」

 

  開業当初、なぞともCafe新宿店は「コアなファンから高い満足度を得たが、稼働率は極めて低かった」(浦田氏)という。だが、他のアミューズメント施設で体験できない新鮮な体験はSNSなど口コミによって広がり、稼働率が伸び始めた。その後も右肩上がりで伸び続け、開業約3年目を迎える平成28(2016)年6月現在で前年比約2倍の来場者数を達成。現在も週末になると1時間以上の待ち時間はざらだ。「レジャー施設では興味深い動向で、今も伸び続けています。それはお客様が離脱していないことも意味します。運営側にとっても嬉しい現象です」と浦田氏は語る。
 
 

なぞともCafe新宿店のカフェエリア。
ミッションの順番を待ちながら店内で販売されている「カップNAZO」に挑戦する来場者も多い。

 
 
限られた空間を超えた遊びを
ネットとの融合で提供していきたい
 
 
 なぞともCafeではミッションキューブのコンテンツを3カ月に一度、変更するというルールを設けている。謎解きコンテンツの鮮度を保ち、常に来場者を呼び込む考えだ。開業後の2年間に100作以上のコンテンツを公開したという。
 
  店舗展開も進んでおり、新宿店を皮切りに、渋谷店、なんば店、六本木店、名古屋栄店をオープンし、海外でも中国の杭州市とイギリスのロンドンにもテスト出店した。
 
  平成28(2016)年3月、ナムコはスマートフォンアプリ「ロケなぞ」をリリースした。これはダウンロードしたアプリによって街歩きをしながら、リアルな場所の情報を基に謎解きをするゲームである。今後は、ロケなぞもポータルとして外部のコンテンツ制作者の作品も紹介していく。
 

   浦田氏はロケなぞについて、「リアルを起点としてネットと融合する遊びを作りたかった。『ロケなぞ』はリアルの施設を持っているからこそ展開できるゲーム。バーチャルな分野の事業者にはリアルな空間を使うのはリスクが高いし、ノウハウもない。我々には、リアルな事業者だからこそ持っている優位性があるのです。今後も、リアルな場所でお客様との関係を構築しながら、限られた空間を超えた遊びをネットとの融合で提供していきたいですね」と語り、リバーチャルの進化に意欲的だ。

 
 改めてリバーチャル構想とは何か? リアルな空間でしかできないことがある。一方で、ネットやスマートフォンなどバーチャルの独壇場もある。まずは、それぞれの威力と特性、さらには弱点を理解したうえで、事業の全体像を構想する。リバーチャル構想とは、リアルとバーチャルの優位性を組み合わせ、対象とする事業の価値を最大化する新時代のアミューズメントビジョンなのである。
 
 リアル苦境の時代だからこそ、フラットな目線で世の中を見る必要がある。リアル空間ビジネスへの自信と愛情を持ちながらも、バーチャルを敵対視せず、謙虚に学んでいけば新しいモデルが浮かびあがるはずだ。ナムコのなぞともは、その可能性が十分にあることを教えてくれるのである。
 

ロケなぞのアプリ画面。
『ダブルスパイの謎』は無料版と、東京と大阪を舞台にした
有料版がリリースされている。

 
 
 

 
 
 

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名称:なぞともCafe 新宿店
種別:アミューズメント施設
事業者:株式会社ナムコ
開業:平成26(2014)年8月22日
開館時間:平日12:00-23:00 /土日祝10:00-23:00(年中無休、1/1のみ休業)
所在地:東京都新宿区歌舞伎町1-16-5ドン・キホーテ新宿東口本店 7F
入場:無料
ミッションキューブ利用料:1,080円(1名/1回)
延べ床面積:267㎡
施設構成:ミッションキューブ10室、カフェ・物販スペース
企画:株式会社ナムコ
設計・施工:株式会社フジヤ
ウェブサイト:http://nazotomo.com/nazotomocafe/shinjuku/top.php