パネルディスカッション
『リアル空間産業の未来ビジョン』
 

パネリスト
浦田健一氏(㈱ナムコ 新規事業推進部ゼネラルマネージャー)
水野英明氏(㈱BIGFACE 代表取締役社長)
泉谷政達氏(AATJ㈱ マーケティング本部 営業・事業推進部長)
 
モデレータ
池澤守氏(㈱池澤守企画 代表取締役)
 
コンダクター
入谷義彦(にぎわい空間研究所 主席研究員)
那須野純志(にぎわい空間研究所 主席研究員)
 
 
 
>>>> 事業の背景と狙いについて
 
>>>> テーマ01:リアル空間ならではの価値とは何か?
 

 

 
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事業の背景と狙いについて

 
リアルな店舗をクリエイターの
発表の場として設計する
 
 
池澤 それではパネルディスカッションに移らせていただきます。みなさん、どうぞよろしくお願いします。今も動画での紹介がありましたが、ファーストペンギンとして一流の仕掛け人ぞろいです。今日のために相当お忙しいところ、無理をして時間を割いていただきました。ぜひ、たくさんのご意見をいただければと思います。
 

                     


   動画で紹介したのは、にぎわい空間研究所の研究レポートでも紹介した事業です。事業の背景や狙いについて、お一人ずつコメントをいただければと思います。まず、浦田さんいかがでしょうか?
 
  浦田 私は、リアルとバーチャルを融合、交差させる考え方をもちながら事業を展開しています。事業では川上にいる企業と川下にいる企業があるのが一般的ですが、これに縛られぬようゼロから設計していこうというのが発想の背景にはありました。店舗の設計だけでなく、ビジネスのモデルごと作り上げて、世の中にない事業領域を作ってしまおうという考え方で作ったのが「なぞともCafe」です。
 
 
 

浦田健一(うらた けんいち)氏
㈱ナムコ 新規事業推進部ゼネラルマネージャー
 1965年元旦生まれ。1988年株式会社ナムコ入社後、アミューズメント施設の運営、地域統括責任者、本部責任者等を歴任。2011年より新規事業企画部署のゼネラルマネージャーに就任し現在に至る。リアルとバーチャルを融合した「なぞとも事業」や、IP施設事業の新しい在り方を提案する「アニON STATION」「キャラクロ」など、アミューズメント業界のコンセプトリーダーとして、時代を牽引する新たな「遊び」を生み出した。

 
 まず、最初にサイトを構築しました。店舗のサイトは通常自店の紹介だけをしますが、このサイトでは自店の紹介はほんの一部で、謎解きイベント業界すべての情報を、『価格.com』や『食べログ』のように紹介し、業界を盛り上げ、このサイトに集まるお客様を送客するかたちで我々の施設を展開しました。
 
 その展開にあたっては、謎解きイベントを考案するクリエイターの方々の発表の場所として使っていただくかたちをとりました。SNSのプラットフォームが全盛期だった時のように、リアルな店舗がクリエイターたちの発表の場所になり、リアルなプラットフォームになる。そういう考え方で全体を設計しました。

謎解きイベントの情報があつまる「なぞとも」サイト

 今、集客が厳しい時代に、リアル(店舗)とバーチャル(ネット)を融合させて、川上や川下がない新しい事業領域を作り上げていこうという壮大なテーマで、コンセプトワークを池澤さんと一緒にやりました。
 
池澤 ありがとうございました。

 
 
 
 
 
 
 
遊んで思い出を作ってもらう
福岡の2.5次元ショップ
 
池澤 引き続きまして、水野さんお願いします。 

                     

 
  水野 妖怪ウォッチというコンテンツのお店を作るときに考えたのは、(著作者である)レベルファイブの日野晃博社長が思っていることをかたちにしたいということでした。それに、子どもたちがただ商品を買いにくるのではなく、店舗で遊んで1日を楽しんで帰る場所というのを考えて「ヨロズマート福岡総本店」を作りました。
 
  最初は、どういう方向性に持っていくか迷いがありました。遊び場スペースを作ったら購買が下がるとも考えました。でも、「妖魔界」という妖怪が生まれた場所というテーマのもと、実際に色々な妖怪に会えたり、遊べたり、妖怪ウォッチの着ぐるみに触れたり、そういう世界観を作ろうと思いました。
  

水野英明(みずの ひであき)氏
㈱BIGFACE 代表取締役社長
1978年生まれ。18歳で吉本芸人としてデビューし3年間活動。コンビ解散後、ADの仕事に就く。その後27歳で独立。2007年、29歳でテレビ番組を制作する株式会社BIGFACEを設立するという異色の経歴を持つ。近年はアニメのライセンサー事業にも進出。独自のクロスメディア戦略で一大旋風を巻き起こした「妖怪ウォッチ」では、アニメの2次元の世界が3次元の実店舗で楽しめる“2.5次元”のオフィシャルショップを展開している。

 

 (設計施工を依頼した)フジヤさんにはご迷惑をかけましたが、何度も何度も設計は見直しました。また、アッカンベーカリーという妖怪ウォッチに出てくるパン屋を作って、ゲームに登場するパンを販売しました。これは味の研究もずいぶんと重ねました。なかなか、近づくことができなかった時もありました。また、最初はお店の妖怪が恐ろしいものでしたが、子どもたちに近づけるにはどうしたらよいかを考えながらお店を作っていきました。
 

妖怪ウォッチの世界に没入できる「ヨロズマート福岡総本店」

 
 
 弊社はとても挑戦型の企業です。さきほどの「ファーストペンギン」って俺なんだという気持ちで聞いていました。自分はペンギンの群れだと3番目ぐらいだと思っていたのですが、ファーストペンギンと言われると照れ恥ずかしい部分もあります。今、全国にお店を展開しています。ナムコさんともご一緒させていただいています。
 
 今後も、ただモノを買いに来るだけでなく、遊んで思い出を作ってもらえる場所として考えたのが2.5次元ショップの福岡総本店です。ペンギンの水野でした。
 
池澤 ありがとうございました。立派なファースペンギンです。尊敬しております。
 
水野 そんなカッコよくないです。
 
 
 
海外でのイベント経験から
肉に特化したフードフェスが誕生

                     

 
 
 
池澤 では、肉フェスの仕掛け人、フードイベントのファーストペンギン、泉谷さん、よろしくお願いします。
 
泉谷 AATJもファーストペンギンと言っていただくのが正しいのかどうかはわかりません。我々よりもずっと前から、『オクトーバーフェスト』『B-1グルメグランプリ』など飲食メインの屋外イベントはたくさんありました。
 
 

泉谷政達(いずみたに まさたつ)氏
AATJ株式会社 営業・事業推進部長
1970年生まれ。広告制作会社、広告代理店でSPプランナーとして活動。その後は映画業界に転身。映画配給会社ではメディア戦略やコンテンツアグリゲーション業務を、映像制作会社では劇場公開用映画作品のプロデュースを手掛けた。2010年AATJ株式会社設立時に合流。2014年5月に立ち上げた「肉フェス」を、SNSを基軸に据えた独自の情報拡散戦略にもとづき、年間100万人以上も集客するモンスターイベントに成長させた。

 
  事業の経緯も含めてお話をさせていただきます。AATJ自体は音楽興行、コンサートの事業をメインとして活動をしていました。その流れのなかで、日本のカルチャーを海外にプレゼンテーションするという目的のもと、『Tokyo Crazy Kawaii(東京クレイジーカワイイ)』というブランド名のイベントを、パリ、台北でやらせていただきました。昨日まで、タイのバンコクでも、あるイベントとジョイントをして東京クレイジーカワイイを開催していました。
 

  
パリで行われた “Tokyo Crazy Kawaii Paris”の様子
 
 

 パリや台北でこのイベントをしたとき、衣・食・住のすべてを持っていきました。一番、現地の反応がよいのは間違いなく「食」なんですね。エンターテイメントやアパレルなど、いろいろなものを持っていくのですが、格段に食への興味が高い。食に特化したイベントを海外に展開していけないか、という事業的な目標が立ちました。それを達成するために、まずは国内でNo.1を目指せるようなイベントブランドを作らないといけない。
 
 ここからは「運が強かった」というあたりが近いかもしれません。事業に着手した3年前、メディア的にも肉ブームが本格的に騒がれ始めました。当時は熟成肉がいろいろなメディアで取り上げられたタイミングでした。あるアイテムに特化したフードフェスがないことに気づきました。ラーメンフェスはありましたが、それ以外ではいろいろなジャンルのフードが総花的に集まっているイベントばかりでした。そこで、肉に特化したイベントをやろうということになりました。
 
 ただ、普通に屋外でテントを並べて、いろいろな店舗が肉を焼いて、食べていただくかたちだとつまらない。音楽フェスみたいなフードフェスができないか、そういうかたちで第2のコンセプトができました。普段の生活動線だとなかなか行けない人気のお店、予約が取れないお店、というのを人気音楽アーティストに見立てて、そのアーティストが一堂に会したフェスをやろうということになりました。どんなタイトルにするか?『肉フェス』でいいんじゃないか、という感じでサクサク決まっていきました。初開催をしたのが駒沢公園で行った第1回の肉フェスでした。
 

約29万人を動員した第1回の肉フェスの会場風景
 
 それから全国のさまざまな都市で16回もの肉フェスを開催してきました。ゴールデンウィークはお台場で開催させていただきます。
 
池澤 ありがとうございます。肉の音楽フェスだったんですね。そう考えるとわかりやすいですね。

テーマ01:
リアル空間ならではの価値とは何か?

 
イベント性という空間の価値で
作った店舗の鮮度を維持する
 
池澤 お話いただいたような狙いや背景があり、こういうチャレンジブルな事業の成果が生まれています。そういうなかで、リアルが勝負をする土俵というのは、先ほどの基調講演で説明させていただいた通り、「リアルならでは」という点と、「バーチャルの連携」という点があると思います。では、リアル空間ならではの価値とは何か、というテーマで伺っていきたいと思います。
 
 リアル空間ビジネスが全体としては苦戦している。でも、みなさんは、そこをうまく成功させています。そこには消費者が潜在的に求めていることにうまく刺さる工夫があったと思います。そして、生の反響を見ながら次の手を練っていると思います。そういうリアル空間ならではの価値ということをテーマにご意見をいただけますでしょうか? 浦田さん、お願いします。
 
浦田 池澤さんの講演でもおっしゃられていた通り、「今だけ、ここだけ、私だけ」ということを明確にしていくことだと思います。今の時代、スマホをみんなが持つようになり、限られた時間の取り合いが発生しています。財布の中身もそうですが、以前は、余暇時間をリアルな場で楽しむために足を運んでくれていました。しかし、それがスマホに置き換わってしまうと、実際のロケーションまで足を運ばなければならない理由がなくなり、相当な価値を感じてもらえなければ、時間を割いてもらえない時代となりました。
 
 先ほどの肉フェスもそうだと思いますが、レジャー産業では、期間限定でイベント性が高いものにリアルな空間の価値が生まれていると思います。そこを第一に考えながら、作ったお店の鮮度の維持を図っています。それが、リアル空間の価値だと思います。
 
池澤 どのような工夫がポイントなのでしょうか?
 
浦田 工夫のポイントは、イベントをやって、さっと引くのではなく、お店を構えて長い期間やっていく。リアルな常設施設とイベント的要素との融合だと考えています。
 

池澤 「なぞともCafe」のカフェは飲食をしなくても滞在できるのですよね。
 
 
 謎解きの前後で利用できるカフェ。こういったフリースペースが店舗全体の賑わいを生み出している
 
浦田 そうですね。極端に言えば待合室的な役割ですが、カフェという響きが敷居を下げて、同じ価値観を持つお客様同士のコミュニティの場になります。イベントの連続体が常設施設を成り立たせている。今はそういう時代だと考えています。
 
池澤 見事に時代の風を捉えているということでしょう。
 
 

お客さんに寄り添う気持ちを
接客でも絶対に忘れない

 
 
池澤 では、水野さん、お願いします。
 
水野 僕は「リアルが苦戦している」というお話を聞きながら、それはどうだろうか、と思っていました。僕が今やっている商売の相手にしているのは小学校低学年の子どもたち。SNSを通じて来るという世代ではありません。
 
 福岡の店舗では、アニメの世界を身近に感じられるように店舗づくりをしました。バーチャルとリアルをどう見せていくか、ということは考えています。リアルの店舗は本当に苦戦しているのでしょうか? ディズニーの店舗も苦戦はしていないと思うし、少し話が違ってくるのかなという印象を受けました。
 
 先ほどの話でリバーチャルという言葉が出てきました。僕らのキャラクターグッズの商売でリバーチャルの方向に持っていくと、ちょっとかけ離れていってしまうのかな? と思うところはありました。12歳以下の子どもはVRを見られないという制限もあります。ディズニーのようにリアルに寄っている場所もあります。ですので、リバーチャルについては、「こうだ!」と言い切ることはしたくありませんね。
 
  池澤 BIGFACEさんはリアル限定という戦略を取られているような気がします。
 
  水野 リアルになるべく近づけているという感じです。ただ、一方で、我々もテレビCMなど広告を試しました。でも、子どもたちが一番観ているのはYouTubeです。YouTubeを活用しての広告宣伝は大きな成果があり、テレビCMの2倍から3倍の動員につながりました。アニメのCMを見たからといって、次の日にお店に行くという時代ではない、とは感じています。
 
 ただ、バーチャルな手法でキャラクターが出てきて、子どもたちが喜ぶかは今後の課題だと思っています。やはり、僕らのやっている商売では、着ぐるみの力はすごいです。子どもたちの反響が大きい。年齢が少し上がると「本物じゃない」と思うかもしれないけれど、僕らがターゲットにしている世代からすれば本物のジバニャンだと思って、着ぐるみに触ってくれる。そこが僕にとっても悩みどころではあります。
 

「ヨロズマート福岡総本店」では不定期できぐるみが登場する

 
池澤 そういう点では2.5次元ミュージカルも、かなりリアルに気を使っていますよね。福岡のヨロズマート総本店でも店員の方に「なりきり接客」をさせているとお聞きしました。
 
水野 先ほどご紹介していただいた通り、私は吉本興業の芸人でした。お客さんと接することを商売としていました。ですから、「なりきり接客」をさせている理由は、お客さんに寄り添うという気持ちを絶対に忘れないということ。店内が妖魔界を再現したセットになっている。店員がその世界観の一員になりきることも必要だと思います。子どもたちが、「妖怪ウォッチの世界に入ったんだ!」と思ってもらえる。「ケイタ君、ジャバニャン、コマさん、コマじろうと一緒に遊ぶんだ!」という意識をもってもらうために、店員にもそういう教育をしています。
 

「ふくふく時間」になると車掌に扮した限定商品を購入できるチケットを配布。
子どもたちとはあくまで作品世界の人物として接する

 
 
 
池澤 素晴らしいですね。まさに、リアルならではの体験価値ですね。そこに行ったらグッズショップがあるのではないのですよね。
 
水野 遊び場を作るというテーマにしたかったですね。まさに福岡なので、レベルファイブの本社がある地域です。東京にも何店舗もありますし、大阪や名古屋にもお店ができます。日本全国にヨロズマートが10カ所あります。しかし、福岡は妖怪ウォッチが生まれた発祥の地であり、福岡総本店では妖怪が生まれた妖魔界を再現するのだと強く意識しました。
 
池澤 ありがとうごじざいました。
 
 
ちょっとした非日常を提供し、
体験をSNSにアップしてもらう
 
 
池澤 それでは最後に泉谷さんお願いします。リアル空間ならではの価値ですが、まさに肉フェスは食べ物ですから、そこに行かないと食べられません。
 
泉谷 このお二人と弊社がやっていることの大きな違いは、常設の施設ではなく、期間限定で突然現れて風のように去って行くビジネスという点です。もちろん、天気勝負など不可避のトラブルがあります。ですので、リスクは相当高いです。なぜ、それなのにやるのか、それこそが価値なのかもしれません。
 

2017年1月5日~9日に大阪の京セラドームで開催された
『スーパープレミアム 肉フェス ~NEWYEAR ニクトーバーフェス~』の会場内の様子

 
 
泉谷 これはお正月明けすぐに、1月の5日から9日にかけて大阪の京セラドームを使って開催した肉フェス会場の様子です。決して夜だからこういう絵ではなく、朝からこういう状態にしました。イメージは「近未来の進化型の屋台村」です。
 
池澤 これはいつもの屋外ではなく、ドームの中ということですね。
 
泉谷 メディアで紹介される肉フェスは、青空の屋外に肉料理の屋台がずらりと並び、そこにお客さんがたくさんいるというイメージが定着していると思います。ドーム球場では、京セラドームと福岡ドームでやらせていただきました。ドーム球場で開催することのメリット、デメリット、反省点を踏まえて、我々にできることをやりました。
 
 集まること、食べること、みんなで美味しいねと言いながら、いろいろなものを食べたり飲んだり、写真を撮って、SNSにアップするというところまでを一連のレジャー行動として捉え、その行動自体を楽しんでもらおう、というのが目的でした。
 
 会場に入った瞬間に、この写真のような風景が目に飛び込んで来るように会場設計をしました。この絵が飛び込んでくると、みなさん写真を撮りまくります。そこからグラウンドエリアに降りていき、好きなお肉料理を買ってもらいます。
 
 また、このイベントでは「オクトーバーフェスト」でも人気のドイツビールだけを集めました。なぜかというと、このビジュアルがすごく大切だったのです。あたかも遊園地に来たかのような感覚に陥る。オクトーバーフェストの最大の特徴は、こういうビジュアルです。それを我々のイベントでも活用させていただきながら、非日常感を演出しました。
 
 普段の生活動線のちょっとした非日常の瞬間を友達や家族、いろんな身の回りの人と体験してもらって、今の若い方を中心にFacebookやTwitter、Instagramなどのソーシャルメディアにアップするまでがトータルでのレジャーなのかなと我々は捉えています。レジャーパッケージを完結させられるような空間づくりを行ったのが京セラドームでの肉フェスでした。
 
 今度のゴールデンウィークについても、これを進化させたものをお台場でやっていこうと思っています。とにかく、SNSにいかに乗っていくかを考えて、先手、先手を打ちながら、新しい空間提案をしています。ご飯を食べるだけでなく、そこに行くこと自体が目的になるかたちの場づくりを今後もやっていけたらと思っています。
 
池澤 AATJさんは美味しさは味だけでなく、楽しさと一体になって初めて美味しいんだと考えていますね。
 
泉谷 美味しいとか、美味しくないというのは個人差があると思います。もちろん、「これが美味しいんです」という提案はさせていただきます。国産和牛の店舗をできるだけ多く揃えたり、味にこだわりながら、なおかつ、どういうシチュエーションで食べるのか、ということが今の消費者には大切なポイントだと思います。
 
 
家族や仲間とともに肉料理と飲み物を楽しむ肉フェスの来場者
 
水野 僕、質問してもいいですか?
 
池澤 はい、どうぞ。
 
水野 この会場を暗くしたのなぜですか? なぜ、夜のような雰囲気にしたのですか?
 
泉谷 普通だとご飯を食べるシチュエーションは暗くありません。とにかく雰囲気重視です。準備段階では「飯を食べるのになんでこんなに暗いんだ!」という苦情もいただくことを覚悟していました。しかし、苦情はまったくありませんでした。とにかく、いろいろな場所でお客様は写真を撮っていただきました。我々もよかったなと思いました。
 
水野 肉フェスって、1日いても楽しい演出をしてきました。これだと、「朝から何回、夕食を食べるんだ!」ってことにはなりませんか?
 
泉谷 そのへんは、我々も割り切りがありまして、これだけたくさんのお客様に来ていただくと、1日中いらっしゃるのは物理的に難しいのです。調査すると、長くても2時間ぐらいなんです。繁盛店のセオリーである「それなりの単価で客席を回転させていく」ことを我々も踏襲しています。2時間のなかで最大限楽しんでいただく、という考え方ですね。
 
水野 ありがとうございました。
 
池澤 デジタルやバーチャルであれば無料で遊べる時代に、わざわざ来ていただく、お金を払っていただく、そのためにみなさん素晴らしい工夫をされていらっしゃると思います。

テーマ02:
バーチャルといかに連携をするのか?

 
ネットとリアルな店舗を
コンテンツやアプリでつなぐ
 
池澤 一方ではバーチャルとの連携や融合の可能性について、チャレンジされています。そういったお話も伺えればと思います。浦田さん、よろしくお願いします。
 
浦田 スライドと動画で紹介します。今、新たなエンターテイメントの事業をいくつもやっているのですが、そのひとつが「なぞとも」の事業です。なぞともの事業は20代から、30代、なかでも女性がターゲットです。パズルやクロスワードが女性週刊誌に掲載されているので、女性の方と謎解きは相性がよいようです。それでは、リバーチャルでどのような事例があるかを紹介します。
 
 まず、なぞともCafeのプロモーションビデオを紹介します。
 

  PVは、さきほどの水野さんのお話でも出ましたが、YouTubeに貼り付けておいて、どんどん見てもらいます。PVの内容も「これはなんだろう?」と思わせるものにしてあります。
 
 今、若い人をターゲットにしたスマホなどのゲームは、『ポケモン GO』などのように、リアルをどんどん侵食しています。リアルな場を使って、バーチャルな遊びをさせるということです。こうなってくると、リアルとか、バーチャルなどといった境がなくなりつつあると感じています。
 このように、スマホなどの登場で、2つが融合するような事業領域が生まれてきました。リアルな場所でビジネスをしている我々が、逆にネット側のビジネスをしたとしても、やれないはずがない。リアルで戦うのであれば、我々の得意分野であり、お家芸である。そういう概念で、この状況をプラスに考えたのが、なぞともCafeの事業構造です。
 
 施設事業のビジネスモデルは、「客数」「客単価」「回転数」の掛け算でキャパシティが決まり、限界値があります。ネットの事業体は、フィールドの制限がありませんから、数字の限界値がない。そういう領域を取り込むことによって概念を変えたいと考えています。
 
 本日は、リバーチャルの実践例を2つご紹介します。ひとつは『絶望解体ワカバクダン』と、もうひとつはスマホのアプリを使った『ロケなぞ』です。
 
 まず、『絶望解体ワカバクダン』です。これは、爆弾を解除するコンテンツの名前です。「なぞともサイト」では、謎解きのマーケット全体を紹介していることをご説明しましたが、このサイトに「絶望解体ワカバクダン」のバナーを貼り付けてあります。
無料で遊べるウエブ上の謎解きゲームです。
 

 
 ※ クリックでサイトへジャンプします。
 
 謎を解けば、爆弾解除できるのですが、解除できたと思ったら、またタイマーが動き出し、本当に止めたいのであれば、リアルな店舗に行ってくださいというストーリーです。今、なぞともCafeは全国出店しており、7店舗あります。実際に店舗に行くと、画面の中にあったバーチャルな空間が、リアルなものとして存在しています。リアルにそこで爆弾解除してもらって、感想をSNS上で口コミしてもらい、話題性を喚起させてリアルな空間に来ていただく仕組みです。
 
 そうやってコンテンツを基軸としながらネットとリアルを相互利用してもらっています。実際に、これは面白いという反響があり、ツイッターのトレンド入りをして、お客様もたくさん来店していただきました。
 
 もう一つはアプリを使ってリアルと融合させる『ロケなぞ』です。PVがありますので、見てください。
 
 
 見ていただくと分かる通り、アプリの中だけで遊ぶのではなく、実際の場所を使って遊んでいただいています。アプリの中ではストーリー展開とともに誘導します。無料版もありますので、ぜひ、ダウンロードして遊んでみてください。今はiPhoneだけですが、今後android版を投入して本格的に展開予定です。
 
 ロールプレイングゲームのようにある物語設定のもとでプレーヤーが役割をもち、リアルなドラマを進めていくという考え方です。実際にメールが届いたり、GPSで場所を特定できたり、地図を見たり、実際の場所と紐づけます。どこでも、いつでもできるのではなく、実際にその場所に行かないとプレイできません。最後は我々の施設に足を運んでもらって、クライマックスを迎えます。このように、「ロケなぞ」はお客様を送客、誘導できる要素を持っています。
 
 ショッピングセンターの中で謎解きをしながら、人通りの少ないところに誘導する使い方も実験的に実施しました。アニメキャラクターで聖地巡礼などにも使っていけます。このような、実際にアプリを使ったり、ネットとリアルをコンテンツでつなぐという事例でリバーチャルに取り組んでいます。
 
池澤 ありがとうございます。かなりリバーチャルな遊びで楽しみですね。
 
 
映像による内装演出にトライし、
変化に対応する俊敏性を高める
 
 
池澤 水野さんも3月に名古屋に新しいお店をオープンしますね。
 
水野 正直言いますとトライなんですよ。妖怪ウォッチの名古屋のお店がオープンします。真っ白な壁に内装を作り込まずに、プロジェクターで映像を投射します。そこに遊びを入れていきます。ですから、プロジェクターのスイッチを切ったら単なる真っ白な壁です。でも、プロジェクターのスイッチを入れれば、壁に映像が投射されて、子どもたちは妖怪ウォッチの空間に入ったと感じてもらえる。
 
 来店するたびにお店の内装が同じだとつまりません。春休み、夏休みで内装を変えたいと思っていました。しかし、内装を作り込んでしまうと、内装費用を償却するだけである一定期間が必要です。どうすればいいのか、と考えていました。そこで、こういうプロジェクターによる映像内装にトライしてみました。
 

「ヨロズマート メイカーズピア名古屋店」の店内

 
池澤 天高も高そうですね。5mぐらいありますか?
 
那須野 そうです。5mありますので、相当な高さの壁の空間です。作るものがなくて内装会社が困る店舗ですね。
 
水野 おもしろいからトライしてみようと思ってやりました。将来的には、映像がすべて動画になっていて、触ったら妖怪が出てくるなんてのもやりたいですね。でも、そこまでの予算感がわからないので、ひとまず、今回は店舗の壁面に映像を映して、子どもたちが「うわ、ここスゴイ!」と感じてもらえるような空間を作りたいと思ってこういうかたちにしました。
 
池澤 トライアルなので、誰もやったことがないですね。
 
水野 プロジェクターのスイッチを切ったら、単なる真っ白な壁ですから。
 
池澤 フロアに妖怪ウォッチのグッズがあるんですね。おそらく棚は2mぐらいまででしょうから、天高が5mもあるとかなり映像に囲まれた空間ができそうですね。
 
水野 それが狙いなんです。天高5mの内装費はかなりかかりますからね。我々のような商売が成り立つのは難しいのです。弊社はレベルファイブのコンテンツを扱わさせていただいています。さまざまなコンテンツが出てきます。例えば、これからリリースされる「スナックワールド」。そういった新しいコンテンツが出たら、すぐに内装を切り替えられる。明日、店舗に行ったら、「あれ、スナックワールドのショップになっている!」という感じでもできるかなと。
 
 もっと言えば、月曜日から水曜日まではスナックワールド、木曜日は別のコンテンツなど、そういうお店があってもよいのではと思って、今回の映像による内装を採用しました。「俊敏性ショップ」ですね。映像も毎日変わって、子どもたちがそこで楽しんでくれる。そんなことも売りにしたいと思います。
 
池澤 うまくいったらショップの革命ですよ。
 
水野 ですので、先ほど肉フェスの暗い会場での運営についてご質問させていだきました。名古屋の店舗も店内が暗いんですよ。だから心配している部分もあるんですが、その空間を作るために今回はトライしました。普段、あまりトライできないので、このお店についてはバーチャル感を出しました。
 
池澤 3月13日あたりにオープン。福岡のヨロズマート総本店の名古屋版ということですね。
 
水野 そうですね。ただ、内装はまったく違います。これは本当にトライです。やってみたいと思いました。
 
池澤 会場のみなさんも、名古屋にお立ち寄りの際には、ぜひお立ち寄りください。
 
 
待ち時間の課題を克服するために
看板のLEDディスプレイ化を検討
 
 
池澤 それでは泉谷さん、肉フェスはSNSでの口コミバイラルを起こすようなうまい仕掛けというのは分かるのですが、あとは極めてアナログなものの集合体のように見えます。いかがでしょうか?
 
泉谷 おっしゃる通りですね。我々もバーチャルとどのように融合させるかということは取り組むべき課題です。ざまざまなことを検討しています。
 
 例えば肉フェスの店舗の看板はすべて我々の方で製作をしています。同じデザインで統一をしています。他のフードイベントでは、各出店店舗が好きなデザインのものを好きなように演出をしています。それはそれで、ガチャガチャ感が出て楽しいのですが、我々のコンセプトはあるトーンは完全にコントロールしたうえで、各店舗に最大限のポテンシャルを発揮していただくかたちでやらせていただいています。
 
 
肉フェスの会場。店舗の看板デザインは統一されている
 
 ただ、普通の看板なんです。ゆくゆくは、看板自体をLEDディスプレイにしてしまいたいと考えています。目的としては、肉フェスは尋常ではない待ち時間です。これは改善しようがありません。長い店舗だと1時間半待ちます。その間のエンターテイメントをどのように提供するか、というのがこれからの課題です。ひとつは、店舗の看板をLEDディスプレイ化して、例えば焼いている映像を映し出す。どこまでシズル感を訴求できるかが大切だと思います。もちろん、協賛スポンサーのCMもそこで流しますよとか。今後、動画で会場全体の演出も含めて、訴求力を上げていけるかというところで、イベント全体の売り上げも上げていきたいと考えています。
 
池澤 LEDディスプレイだと輝度が高いので昼間でもくっきり見えますね。
 
泉谷 まさにそこが狙いです。屋外の公園で開催するのがベースになりますから、輝度が低いと使えないのでLEDディスプレイの可能性を感じています。お肉が焼かれている映像もそうですが、ライブ感が大事な現場です。各店舗、1時間だけのタイムセールを行います。行列ができていない店舗はそのタイムセールで行列を作って、売り上げを向上させていきます。通常のイベントだと「食材が余ったからタイムセールをやります」ですが、我々は違います。場を盛り上げるためのタイムセールです。その告知も、その時々の状況によって変わっていきます。俊敏性の高いメディアとしてのLEDは我々も可能性を感じています。
 
池澤 肉フェス会場はアナログだらけのように感じられますが、実際にはそういうデジタル技術を使われていますね。電子決済もいち早く導入されましたね。
 
泉谷 電子マネーの決済端末を屋外の食のイベントで、おそらく初めて導入したと思います。第1回の肉フェスの問題点として、食券を買うのに3時間待ちという状況になってしまいました。そのユーザビリティの悪さが非常にお客様からSNSを通じてお叱りを受けました。その点を改善するために、電子マネーの決済端末を全店舗に導入しました。
 
 実際、電子マネーの端末を使うことで使用手数料が発生しますので、これは運営側が負担しなければならないお金です。実は、かなり痛いです。ただ、それ以上にユーザビリティを上げていくことで結果的により多くのお客様に来ていただけます。顧客満足度を上げていくためのインフラとして導入しました。電子マネーという部分では、バーチャルなのかなと思います。
 
 
 
肉フェス会場に設けられた電子マネーの現金チャージ機と決済端末
 
 
池澤 そういう点では、表の表現でバーチャルやデジタルの力を使っていくこともあれば、オペレーションをユーザーフレンドリーにするために、上手にシステム化していく、そういったところも重要ですよね。
 
泉谷 お客様が楽しむエンターテイメント性の部分は分かりやすいですが、それがあるとより便利になるものを整えていくこともすごく重要です。特に、開催期間が短い屋外イベントでは、開催中には修正が効かないので、その時々によって我々ができる最高の努力の状態を出していかなければなりません。どれだけの準備が事前にできるかが大事です。
 
 あとは、待ち時間が長くなってしまうので、その時間にどういうサービスやエンターテイメントを提供できるか。並んでいる間に肉フェスのEコマースでお肉を買っていただくとか、そういうサービスも今後強化していくことを考えています。
 
池澤 楽しみです。

テーマ03:
リアル空間産業を活性化するための提言

 
空間ビジネスにおける
新しい価値創出への“挑戦”に期待
 
池澤 まだまだお聞きしたいことはたくさんあるのですが、時間もそろそろ迫ってきましたので、最後に、リアルな空間のビジネス、場を使ったビジネスの未来をもっと明るいものにするために、何かヒントがあれば一言ずつお願いします。またディスプレイ業界に対するアドバイスでも構いません、おひとり1分間ぐらいでいただけるとありがたいです。
 
浦田 たくさんありますが、3つだけお伝えします。
 
まず、ひとつ目です。少子高齢化、車離れなどで、どの企業も都心に出店しようとしています。施設事業はよい立地、よい環境でやりたいものですが、家賃はとても高い。それは、施設事業を営む事業者すべての課題です。立地としては人が集まりやすい、だけど地下や高層階でよいから一等立地と同じような効果が得られるよう、何らかバーチャル(ネット)を使って工夫できないかと思います。それをディスプレイ業界が取り込むことで、施設事業者が恩恵を受けられる。そうすればランニングコストは下がります。出店する企業が増えて、ディスプレイ業界の仕事も増えると考えます。
 
 ふたつ目は、今はスピードが勝負の時代です。特に出店するスピードが早いのは大事です。施工に1カ月かかる。そうすると1カ月間は売上がありません。それが単純に1週間にできれば、残りの3週分は売上があります。そう考えると、早く出店させてあげられるよう、施工期間を短くすることは大切。いろいろな内装設備がもっとパッケージ化されることを望みます。
 
 そして、ぜひやってほしいと思う3つ目です。最近はライゾマティクスが人気のようですが、その強さは空間を3Dで捉えられることです。ディスプレイ会社でもセンスと技術があれば、そちらの領域にも行けるはずです。デジタルアートの分野は、ディスプレイ業界だからこそ取り組める分野ではないかと思います。それを武器に持っていただくと、設計施工の部分だけでなく、もっとエンターテイメントやソフトの部分でも事業を展開していけるのではないでしょうか? 以上、この三つをご提案します。
 
池澤 鋭いご提案、ありがとうございます。水野さん、お願いします。
 
水野 僕は、一言で、「挑戦してほしい」と思います。弊社では、六本木に『party on』という施設を作ったのですが、そこでもニューヨークで使われている新しいLEDを入れました。私はそういう新しいものが好きなタイプなので、ぜひ、みなさんにも考えていただきたい。
 
 そして、俊敏性を高めて何カ月もかからずにやっていただければと思います。ディスプレイ業界は厳しい状況かもしれません。でも、僕たちも難しい世界にいます。僕自身が心がけていることは、挑戦し続けることです。ぜひ、みなさんも挑戦をしてください。
 
池澤 ありがとうございます。最後に泉谷さん、お願いします。
 
泉谷 肉フェス、餃子フェスなど屋外のフードイベントを行う会社からすれば、固定の店舗をお持ちなのは非常に羨ましいという反面、期間限定だからこそできることもあるのではないかと思います。そういうことをひたすら追求していくしかないのかなと思います。
 
 前々から、思っている「こういう環境でご飯が食べられたら、なんて素敵だな」と思っている風景をご紹介します。
 
 

屋外のフードイベント “outstanding in the field”の様子

 
 
 白いのはすべてテーブルです。周りにはぶどう畑が広がっています。場所は、おそらくカリフォルニアです。こういうシチュエーション。 “Outstanding in the field” というイベントです。この日に有名なシェフが作ったオードブルをトラックに乗せて、参加者も車でこの場所を目指します。この現場で収穫した食材をみんなで楽しみます。日常のすぐ近くにある非日常な空間の楽しみ方です。
 
 わざわざ、ここでご飯を食べる必要性はまったくありません。色々な体験をしている方の想像のさらに上をいくような価値の提供が大切だと思っています。ここで食べられるものが美味しくて、フォトジェニックであるということもすごく大切です。
 
 これが、イベントの仕事とどう結びつくかというと、期間限定なので肉フェスの会場の中に真っ白な箱を作って、周り全体がこういう絵になるような仕掛けをして、そこにテーブルを並べて、肉フェスの美味しいご飯を食べながら、1時間だけでも非日常の空間でご飯が食べられる。そういう新しいサービス、そこでしかできないサービスを今後提供していきたいなと思います。もちろん、新しいマネタイズも考えていけるので、こういうことをご一緒させていただけると楽しいなぁと思っています。
 
池澤 ワクワクしてきますね。ぜひ、トライアルしたいですね。ありがとうございます。
 
 
事業者とディスプレイ業界が
空間の新しい領域を共創する
 
 
池澤 今日はパネラーのみなさまのリアル空間ビジネスに対するトライアルの実績や期待、未来への展望をたっぷり伺いました。ディスプレイ業界としては、こういったお話をどのように受け止めるか、ちょっと聞いてみたいところです。では、入谷さんいかがですか?
 
  入谷 本日はありがとうございました。にぎわい空間研究所では、パネラーのみなさまの事業を研究事例として研究させていただきました。私自身、この業界に30年いますが、方程式は見つかっていません。30年かかっても方程式が見つからないということは、方程式はないということだと思います。ですので、今後も研究は続けていかなければと思います。
 
リアル空間側から、浦田さんや水野さんや泉谷さんにとって何が本当によいのだろ うかと考えていたのですが、今日、お話を聞いているなかで感じたのは、事業側から見たフェーズと、我々の空間側から見たフェーズには大きな溝があることです。なので、事業側からの視点を持てば、我々が今まで解決できなかったこと、見れらなかった夢や挑戦が見えてくるのかなと思いました。
 

                    

   今日、210名ほどこのホールにいるので、ディスプレイ側からあまり大それた決意 は言えませんが、我々としてパネラーのみなさんが夢見て、挑戦しようとしている事業をバックアップすることは変わりません。ぜひ、よければ、共創しながら、リバーチャルという言葉も噛み締めながら、空間の新しい領域を作っていきたいと思います。
 
 
 
 
 
 

入谷義彦主席研究員
「伝えたい」側にいる企業の「想い」を受け止めながら、空間メディアを構築する側の一員として数多くの企業のパートナーを務めてきた。近年は、改めて百貨店を主軸に SC・SM など複合型商業の計画に従事し、構成からデザインまでの領域を手がけながら、時代に沿った「伝えたい、想い。」を演出している。

 
 
 

池澤 ありがとうございます。那須野さん、最後にまとめていただけますか?
 
那須野 研究員の那須野です。パネラーのみなさま、叱咤激励ありがとうございます。業界を代表して受け止めさせていただければと思います。今、無理だと思っていることが、半年後にはできるようになっていることがあります。内装ディスプレイ業というのは、あらゆる顧客の課題解決の立場であります。それを忘れずに取り組むことだと感じました。
 
 B to Bで終わりがちなのがこの業界の仕事です。ですが、その先、消費者や利用者まで意識したものづくり、ことづくり、ところづくりをしっかり考えて進めていきたいと思います。まだ過渡期であり、現状でもバーチャルは無視できない存在ですが、リアルを超えるのはリアルしかないと信じています。
 

                    

  
 リアル空間は、我々の業界で言えば、ひとつのメディアです。新しい言葉ではありませんが、「ライブメディア」だと思います。生物(なまもの)だから伝わるものであり、ことであり、ところであることは人間に不可欠なものばかりです。そのひとつの手段であるライブメディアの担い手であるディスプレイ産業を支えていけたらと思います。そして、私や私たちの思いが時空を超えて、受け継がれていくことに期待したいと思います。

 
 
 
 
 

那須野純志主席研究員
内装ディスプレイ業の立場で、様々なプロジェクトのディレクションおよびプロデュースに従事。都市型テーマパーク、フードテーマパーク、エデュテイメント施設、リテイメント(リテール+エンターテイメント)施設、エクスペリテイメント(エクスペリエンス+エンターテイメント)施設など幅広い分野を手掛ける。コト体験をトコ(リアルな場所)で体験するスペースメディアを積極的に創造していくことを目指している。

 
 

池澤 みなさん、ありがとうございました。リアルならではの価値、それは、3人の方々が異なるアプローチをされています。リアルならではの価値は多様であり、これからも様々な答えを模索し続けるのだと思います。そして、バーチャルには飲み込まれずに、バーチャルをうまく活用し、融合し、そしてリアルの可能性を拡張させていくんだと思います。そんなことがリバーチャルの重要な戦略になるのだと思いました。今日のご登壇者のファーストペンギンの方々が、来月、再来月、あるいは来年に色々なマジックを見せてくれると思います。期待しております。今日は本当にありがとうございました。

 

② Conference
4)ディスプレイ産業の未来ビジョン

 
 

 Conferenceの締めくくりとして、㈱フジヤの代表取締役社長であり、にぎわい空間研究所の特別顧問である永田智之氏によって「ディスプレイ産業の未来ビジョン」の提言、行動提起が行われました。
  
 
『ディスプレイ産業の未来ビジョン』
 にぎわい空間研究所 特別顧問/株式会社フジヤ  代表取締役社長 永田智之
 
 
 本日はお忙しいなか、「にぎわい空間創出フォーラム2017」にご来場いただき誠にありがとうございました。フォーラムの開催者を代表いたしまして、みなさまにあつく御礼を申し上げます。
 
 池澤様の基調講演、そしてみなさま方によるパネルディスカッションを、まさに目から鱗が落ちる思いで聞かせていただきました。みなさま方の事業、そしてディスカッションを通じて、我々ディスプレイ産業が取り組むべき課題を実感するとともに、「リバーチャル空間」という新たな概念を、学び、探求し、実践しなければならないという強い思いにかられました。このような貴重な体験をさせていただいたことに、改めて感謝の意を表させていただきます。
 
 
ディスプレイ産業の現状と課題 
 
 
 みなさまの貴重なお時間をいただき、私からも「ディスプレイ産業の未来ビジョン」についてお話しさせていただきます。少しの間、お付き合いいただければ幸いです。
 
 ディスプレイ産業は今、従来的な方法論だけではビジネスが成立しにくい時代に突入しています。クライアントのビジネス領域は急速に多様化し、空間をデザイン・施工するだけでなく、新たな事業をともに具現化してくれるビジネスパートナーが求められています。新たなコンセプトを事業化するために、空間づくりのソリューションをトータルで提案できるパートナーです。ディスプレイ産業は伝統の技術を継承するだけでなく、リアル空間の新たな価値を自らが創造する気概と覚悟をもって挑んでいかなければ、我々の産業に未来はないとひしひしと感じております。
 
 ディスプレイ産業は日本の高度経済成長とともに発展してきました。昭和45(1970)年に大阪で開催された『日本万国博覧会』を皮切りに、バブル期の大型展示施設、博物館や美術館の建築ラッシュ、各地で開催された見本市博覧会。戦後の数十年間でディスプレイ業界が活躍する事業領域は急拡大し、リアル空間ビジネスはまさに全盛期を迎えました。
 
 しかし、1990年代のバブル経済の崩壊によって、景気は後退し始めました。世界都市博の中止などもあり、じわじわとビジネスが厳しくなる一方で、世の中ではICT革命が人々のライフスタイルを根本的に変えていきます。
 
 デジタル化、オンライン化によって、情報の伝達手段の常識が変わりました。池澤様がご講演で言及されていたように、ICTは消費者に「フリー」「ソーシャル」「モバイル」という革命的な価値を提供しました。その波は、リアル空間ビジネスを飲み込み、ディスプレイ産業のあり方にも大きな影響を与えたのは、みなさまご存知の通りです。
 
 
リバーチャル空間の創造への挑戦
 
 
 では、このリアル受難の時代に、リアル空間が果たすべき使命はどこにあるのでしょうか。私は、人と人が直接交流する「ヒューマン・コミュニケーション」の創出こそが、リアル空間が果たすべき根源的な使命であると考えています。
 
 リアルな空間にはコミュニケーションを生み出す力があります。生身の人間同士が触れ合うことで生まれる、楽しさや感動、温もりや安らぎといった“ヒューマンなコミュニケーション”は、リアル空間でなければ生み出せません。それらはデジタルで得られるものとは全くの別物であり、人間が本能的に必要としているものだと私は確信しています。
 
 一方では、バーチャルなオンラインビジネスには、リアル空間ビジネスを凌駕する圧倒的な優位性があることも認めざるをえません。
 
 まず、無料で楽しめるサービスが大量にあること。次に、オンライン上で仲間や同じ嗜好の人々と交流できること。そして、スマホというモバイルPCの登場によって、いつでも、どこでも、誰とでも、つながれるようになったこと。こういった、強みによって、バーチャルは人々のコミュニケーションのあり方さえも変えてしまったと言っても過言ではありません。  
 
 では、リアルとバーチャルは敵対するものなのでしょうか? 私はそうだとは思いません。いや、今こそ、リアルはバーチャルと連携すべきであると確信しています。リアルとバーチャルが混然一体化した空間をデザインすることで、それぞれの持つ強みを合わせ持った、「リバーチャル」という第3の「空間」を生み出すことができるからです。この「リバーチャル空間」こそが、人々のコミュニケーションを、より快適で、より豊かで、より楽しい活動に変えてくれるのです。
 
 そして、空間づくりのプロであるディスプレイ業界には、「リバーチャル空間」という、高付加価値のコミュニケーション空間を創造できるイノベーション力がある。私はそう信じています。
 
 
未来に向けたフジヤの取り組み 
 
 
 ディスプレイ業界活性化のために、当社が取り組んでいることについてお話をさせていただきます。私自身はディスプレイ会社の一経営者に過ぎません。ディスプレイ産業の未来に対する夢を描きながらも、そのために、自社で何ができるか、何をすべきかを考え、行動してきました。
 
 ディスプレイ産業の未来のために、3つのことに取り組んでいます。
 
 まず、ひとつ目に「業務推進システムの刷新」です。すべての社員が事業計画の立案に携わるという、“ボトムアップ型の業務推進体制”を築き上げました。社員全員を事業経営に参加させることで、自発的な行動を生み、未来に目を向けた広い視野と意識を育むようにしたのです。
 
 ふたつ目は、社員たちの“ボトムアップ型の提案”から生まれた「にぎわい空間研究所」の取り組みです。にぎわい空間研究所では、当社の事例であるかどうかにこだわらず、リアル空間ビジネスの未来を切り開こうとしている挑戦者の方々を研究し、その英知の社会的共有を進めています。
 
 そして、3つめは「グローバル展開」です。平成28(2016)年12月、シンガポールに現地法人を設立しました。日本国内のクライアントが海外へ展開する際のサポートはもちろんですが、「リバーチャル空間」のグローバルな提案とコラボレーションの拠点にもしていきたいと考えています。
 
 業務推進システムの刷新、社会との研究成果の共有、そしてグローバルな展開。これらの活動を通じて、高い付加価値を生み出すことのできる「次世代空間ビジョン」の構築に取り組んでまいりました。
 
 私は、こうした取り組みを踏まえた上で、ディスプレイ産業における未来創造の中核を担うビジョンが、本日のフォーラムで議論していただいた「リバーチャル空間産業の創造」にあると確信するに至ったのです。
 
 
リバーチャル空間産業がもたらすもの
 
 
 さて、リアルとバーチャルの融合によって生まれる「リバーチャル空間産業」。それは、ディスプレイ産業にどのような変革をもたらすのでしょうか?
 
 まず第1は、「動的空間への進化」です。ファサードや壁面などにプロジェクター映像を重ね合わせることで、今までの動きのない静的な内装空間が、ダイナミックに躍動する動的なショー空間へと進化します。店内が森になったり、海中になったり、滝つぼになったりと、動きのある世界をローコストで実現できるようになるのです。
 
 第2は、「着せ替え可能な空間」です。映像コンテンツを変更するだけで、四季折々の内装演出やクリスマス・ハロウィンなどのアニバサリー装飾を自由自在に着せ替えできる「バリアブル空間」に生まれ変わります。業態リニューアルも容易です。広告などのアドバタイジングメディアにもなるため新たな収益も生み出せます。
 
 そして第3は、「パーソナルなおもてなし」です。スマホやポイントカードなどの顧客IDとリンクすることで、バースデイなどの記念日に合わせたテーブルショーを催すなど、一人ひとりに対応したパーソナルなおもてなしが簡単にできるようになります。展示会でも、顧客の関心に合わせて、展示内容をリアルタイムに変更できるのです。
 
 このように、「リバーチャル空間産業」は、ディスプレイ業界の従来常識を根底から覆すほどの、劇的な変革をもたらすことができるのです。
 
 
未来創造のための行動提起 
 
 
 ディスプレイ産業を進化させるための未来創造。その実現に向け、本日、私は3つの行動提起をさせていただきます。もちろん、それは私自身に向けたものでもあります。
 
 まず第1に、「伝統を受け継ぎながらも、過去の常識を捨てること」です。冒頭でご紹介した通り、ディスプレイ産業は従来、施工を中心としたビジネスで十分に成り立ってきました。しかし、時代は加速度的に変化しています。もう、施工だけで商売が成り立つ時代ではありません。常識を捨てましょう。ディスプレイ産業は、内装施工業ではなく、創造的ビジョンを掲げて新たな事業を提案する空間ビジネスのプロデュース業へと進化するのです。
 
 次に、「リバーチャル空間産業の創造に挑戦すること」です。本日、このフォーラムを通じて、「リバーチャル空間」という新たな空間概念を提示させていただきました。我々が得意とするリアル。そして社会を席巻しているバーチャル。日本のディスプレイ業界が、この両者を融合させた「リバーチャル空間産業」という新しい産業モデルの構築に成功すれば、歴史的とも言える巨大市場を生み出すことができるのです。
 
 そして、3つ目は「世界市場に展開すること」です。ディスプレイ産業は、施工が中心のため、国内に市場が限られてきました。しかし、第3の空間概念である「リバーチャル空間」を具現化できれば、世界への展開も夢ではありません。「リバーチャル空間産業」創造の鍵を握るのは、「コンテンツ力」の優劣です。我々が、何をクリエイトできるかにかかっているのです。ぜひ、グローバルに展開する高い志と斬新な発想をもって、未来創造に挑もうではありませんか。
 
 過去の常識を捨て去り、「リバーチャル空間産業」の創造に挑戦し、世界の市場を目指す。この3つを本日のまとめとさせていただきます。ぜひ、ディスプレイ産業の未来をともに描いていきましょう。                                                  
 
 みなさま、ご静聴ありがとうございました。そして、改めまして、本日はご来場ありがとうございました。